巨額買収とは無縁だった、大塚ホールディングスが動いた。総額約4200億円で米バイオベンチャー、アバニア・ファーマシューティカルズの買収を発表。主力薬の特許切れを目前に控え、未来の“飯の種”を託す。一方、業界関係者からは「高値つかみのギャンブル」という懸念の声も上がっている。

米バイオベンチャー、アバニア・ファーマシューティカルズの巨額買収を発表する大塚HDの樋口達夫社長
Photo:JIJI

「大塚らしくない焦りを感じた」──。12月2日、大塚ホールディングス(HD)は米バイオベンチャーのアバニア・ファーマシューティカルズの買収を発表した。

 今後、子会社の大塚製薬を通じて、株式公開買い付け(TOB)を行い、完全子会社化する運びだ。

 35億3900万ドル(約4200億円)という同社にとって過去最大の買収額に、冒頭の発言をした製薬業界に詳しい関係者は驚きを隠せない。大塚HDは「良くも悪くも、冒険はしない経営風土」(同じ業界関係者)とみられていたからだ。

 そんな大塚HDが巨額買収を決めた理由と目されているのは、間近に迫る、主力製品の“消失”である。

 一般的には、「ポカリスエット」「カロリーメイト」など、機能性食品メーカーのイメージが強い大塚HDだが、実態は製薬会社だ。2013年度の連結売上高1兆4528億円のうち、医療関連事業は1兆0351億円と約7割を占めている。

 そして、その5割超が、傘下の大塚製薬が製造・販売を手掛ける抗精神病薬、「エビリファイ」だ。統合失調症や双極性障害などの治療に用いられる。