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7つの失敗から学ぶ デジタルマーケティングの原則

【失敗2】

情報の囲い込みで、
マーケティングデータが全体最適に使えない

田中猪夫 [一般財団法人 日本総合研究所 特命研究員]
【第3回】 2014年12月19日
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「顧客の近未来の行動」が
予測できるデータに注目が集まる

 マーケティングにおいて、プロセスと結果のコントロールとして、売上などの年間計画(売上分析、シェア分析、売上高マーケティング比率、財務分析)、収益性(製品毎、地域毎、顧客毎、セグメント毎、チャネル毎、注文量毎)、効率性(広告、販促、流通)などの把握は当然行われていると思うが、これらの情報(データ)は、あくまで結果データ(現在・過去)である。

 さらに、デジタルマーケティングでは、今、現在起こりつつある変化の未来のデータなどを把握・収集することが可能だ。

 例えば、ユーザーが商品を購入する前の検討段階でWebサイトを確認したりする行為から、「近未来に購入するかもしれない」というログ情報が企業側に伝わり、リアルな店舗で商品に近づいた場合も、スマートフォンが電波(iBeacon)を感知し「この商品に興味がある」といういうログ情報が企業側に伝わる。

 また、メール配信やセミナー、コンテンツなどで、商品を必要だと思っているが欲しいまでいかない見込み客や、商品を欲しいと思っているが本当に必要か迷っている見込み客を、「商品を購入したい段階」に引き上げるまでのプロセス・ログ情報(マーケティング・オートメーション)を企業側が得ることもできる。その他、SFA(セールスフォース)/CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)のデータ、アドテクのデータなどを把握・収集することが可能だ。

 今回は、この未来からのデータにまつわる「失敗」を研究してみよう。

「上に向かう貢献」が評価される罠

 ある出版社で、デジタルマーケティングのマネジャー(経営管理者)、編集者(本を作る人)と私の3人で雑談をしたときの話。

 編集者曰く、どんな本を出版するかは、編集者の勘と経験から編集会議に提示され決められるとのことなので、出版社のコーポレートサイトとか、Web系メディアの記事コンテンツ、あるいは関連する電子書籍のポータルサイトなどのアクセスログで、ある程度判断できる可能性があるのではないか、そのデータを編集者全員にオープンにして解析できるような仕組みを作ってはどうかと気軽に話を振ってみた。

 ところが、そのマネジャーは血相を変えて「それだけは嫌だ!ダメダメ!」と、日本エレキテル連合のように拒否した。

 落ち着いてから理由を聞いてみると、現在起こりつつある未来からのデータをオープンにすると、各編集者が、アクセス対象のサイトに対して「私のはこうしてほしい」などの改善要求をどんどん出してきて収拾がつかないことが予測できるとのこと。要するに自分の仕事にケチがつくことからリニューアルに追い込まれ、リニューアルする責任が降りかかることを恐れているか、自分が情報を独占することに密かな喜びを見出している訳だ。

 この連載の内容(デジタルマーケティングの7つの失敗研究)のセミナーを行うたびに、参加しているデジタルマーケッターに確認してみると、この出版社の例は普遍性があり、多くのマーケティング部門で収集されているアクセスログなどの未来からのデータは、全社のユーザー部門には公開されず、情報は民主化されていないのが実情のようだ。

 逆に、消費者、顧客をもっとよく知るため、新しいマーケティングとしてデジタルデータを分析し、ビジネスの結果を出すための専門部門を設立する企業も現れてきた。

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田中猪夫 [一般財団法人 日本総合研究所 特命研究員]

1959年11月19日、岐阜県生まれ。日本版システム工学を専門とする。20代に、当時発売したばかりのPCでのVARビジネスを創業。30代に、イスラエルITテクノロジーの日本への展開に尽力。40代には外資系ITベンダーの日本法人のマネジメントを務める。現在は一般財団法人日本総合研究所の特命研究員。「デジタルマーケティング経営研究会」を主催・運営。主な著書 『あたらしい死海のほとり』。問い合わせはこちらまで。


7つの失敗から学ぶ デジタルマーケティングの原則

なぜデジタルマーケティングに失敗するのか。問題は経営層、マネージャー層、そして現場のマーケターそれぞれにある。筆者が目撃した7つの失敗事例を分析し、それぞれの問題点と解決策を考える。

「7つの失敗から学ぶ デジタルマーケティングの原則」

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