選挙戦では、長期的な経済問題はほとんど議論されなかった。しかし、日本経済は中長期的に深刻な問題を抱えている。その1つが財政だ。これが極めて重要な問題であるにもかかわらず、消費税増税は延期され、野党もそれに異議を唱えなかった。

 選挙が終わったいまこそ、腰をすえて中長期的な課題に取り組む必要がある。

増税延期で1.5兆円減、
しかし自然増もある

 消費税の税率は、2014年4月に8%(消費税6.3%、地方消費税1.7%)に引き上げられた。そして、15年10月に10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)に引き上げられる予定だった。ところが、これを1年半先送りし、17年4月にすることとされた。

 13年10月に財務省が公表した資料によると、消費税率の3%ポイント引き上げによる税収増は、平年度ベースで国と地方を合わせて年間8.1兆円(国は6.35兆円)だ。初年度は5.1兆円(国は4兆円強)だ。2%ポイントの引き上げによる増収は、比例計算をすれば、平年度で全体では5.4兆円、国は4.2兆円だが、これが遅れるわけだ。15年度では国で1.5兆円程度減少するとされている。

 このため、15年度予算においては、消費税増収分を想定した低所得者・子育て世帯向け給付金に向ける財源の確保を含めて、歳出を大幅に見直す必要があるとされている。

 他方で、税収の伸びは順調である。14年度予算の税収額は50兆円だが、企業収益が好調なため、法人税収などの上方修正が予想されている。政府は、補正予算案を編成する際に税収の見積もりを51兆円台半ばへと、1兆円超上方修正する見通しだ。

基礎的財政収支半減目標は達成できても、
黒字化は無理

 財政再建に関する政府の目標は、「当面の財政健全化に向けた取組等について」(中期財政計画:2013年8月閣議了解)に示されている。すなわち、「国・地方を合わせた基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減、2020年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」とされている。

 ここで、「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)とは、税収・税外収入と歳出(国債の元本返済や利払いに充てる国債費を除く)との差額である。

 国・地方を合わせた対国内総生産(GDP)比の赤字は、10年度には6.6%だった。14年度の基礎的財政収支赤字は、対GDP比5.1%の25.4兆円だ(図表1参照)