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野口悠紀雄 緊急連載・アベノミクス最後の博打

消費税10%では財政再建の道筋はまったく見えない
本来は消費税率を30%近くにする必要がある

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第5回】 2014年12月18日
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 選挙戦では、長期的な経済問題はほとんど議論されなかった。しかし、日本経済は中長期的に深刻な問題を抱えている。その1つが財政だ。これが極めて重要な問題であるにもかかわらず、消費税増税は延期され、野党もそれに異議を唱えなかった。

 選挙が終わったいまこそ、腰をすえて中長期的な課題に取り組む必要がある。

増税延期で1.5兆円減、
しかし自然増もある

 消費税の税率は、2014年4月に8%(消費税6.3%、地方消費税1.7%)に引き上げられた。そして、15年10月に10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)に引き上げられる予定だった。ところが、これを1年半先送りし、17年4月にすることとされた。

 13年10月に財務省が公表した資料によると、消費税率の3%ポイント引き上げによる税収増は、平年度ベースで国と地方を合わせて年間8.1兆円(国は6.35兆円)だ。初年度は5.1兆円(国は4兆円強)だ。2%ポイントの引き上げによる増収は、比例計算をすれば、平年度で全体では5.4兆円、国は4.2兆円だが、これが遅れるわけだ。15年度では国で1.5兆円程度減少するとされている。

 このため、15年度予算においては、消費税増収分を想定した低所得者・子育て世帯向け給付金に向ける財源の確保を含めて、歳出を大幅に見直す必要があるとされている。

 他方で、税収の伸びは順調である。14年度予算の税収額は50兆円だが、企業収益が好調なため、法人税収などの上方修正が予想されている。政府は、補正予算案を編成する際に税収の見積もりを51兆円台半ばへと、1兆円超上方修正する見通しだ。

基礎的財政収支半減目標は達成できても、
黒字化は無理

 財政再建に関する政府の目標は、「当面の財政健全化に向けた取組等について」(中期財政計画:2013年8月閣議了解)に示されている。すなわち、「国・地方を合わせた基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比を半減、2020年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」とされている。

 ここで、「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)とは、税収・税外収入と歳出(国債の元本返済や利払いに充てる国債費を除く)との差額である。

 国・地方を合わせた対国内総生産(GDP)比の赤字は、10年度には6.6%だった。14年度の基礎的財政収支赤字は、対GDP比5.1%の25.4兆円だ(図表1参照)

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 緊急連載・アベノミクス最後の博打

アベノミクスのメカニズムは、「金融緩和を行なう」という宣言によって、円安への投機を煽ることだ。円安によって輸出産業は潤うが、実体経済は改善していない。実際は、円安が経済成長率を抑えている。これは、アベノミクスの基本が間違っていることを示している。

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