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田岡俊次の戦略目からウロコ

米国・キューバ国交正常化交渉の衝撃
中間選挙敗北で“Free Hand”を得たオバマ大統領

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第44回】 2014年12月25日
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オバマ米大統領がキューバとの国交正常化交渉に入ることを発表したことは、世界を驚かせた。ただ、そもそもキューバ革命を成功させたカストロ氏を反米に追いやったのは、米国の外交姿勢にあった。キューバに対するこれまでのContainment(封じ込め)政策を失敗と断じ、Engagement(抱き込み)に転じようとするオバマ大統領は、米国にとりノドに刺さった骨であったキューバ問題を、ついに終息させた功績を残すことになりそうだ。

実際には多くの観光客がキューバを訪問

 オバマ米大統領は12月17日ホワイトハウスで演説、キューバとの国交正常化交渉に入ることを発表した。1961年の国交断絶以来53年、米国はキューバの孤立化を図ったが、今日キューバと国交がない主要国は米国の他、韓国、イスラエルだけで、日本はもちろんカナダや近隣のカリブ海諸国もキューバと国交を保っている。オバマ氏は「孤立化政策は機能しなかった」とし、従来の対キューバ政策を「失敗してきた時代遅れの手法」と断じた。

 オバマ氏は11月4日の米中間選挙で野党の共和党が上下両院で多数を占めたため“Lame Duck”(機能喪失)化と言われたが、大統領として2期目の後半2年はもはや選挙を気にする必要がないため、歴代の米政権が大票田フロリダ州に多い亡命キューバ系アメリカ人の反発を恐れて実行できなかったキューバとの国交回復に踏み切った。オバマ氏はむしろ“Free Hand”を得た形だ。

 共和党の中には「キューバの米国大使館の開設予算は通さない」と息巻く反キューバ議員もいるが、1977年以来米国は首都ハバナに「利益代表部」を置き、大きなビルを持っているから、看板を「大使館」に替えるだけで済みそうだ。米国は建前上はキューバとの輸出入を禁止してきたが、実際にはキューバは米国農産物の輸出先となっている。米国は自国民観光客のキューバへの渡航も禁止しているが、カナダ等を経由して観光に訪れるアメリカ人は多く、キューバへの外国人観光客は2012年に284万人で、同国にとりニッケル輸出に次ぐ主要な外貨獲得源となっている。

 キューバの国内総生産(GDP)は国連の統計によれば2000年の305億ドルから2012年には710億ドルに伸び、人口1116万人の1人当りGDPは6300ドル余で、中米諸国の中では中程度だ。キューバは2011年から市場経済の導入を進め、自動車の売買も自由化しているため、米国が輸出入や金融取引の規制を緩和すれば、いまは超旧式の車が多いだけに、米国の自動車産業にとっては輸出市場になりそうだ。

キューバに軍政を敷いたアメリカ

 キューバはC・コロンブスが1492年の第1回の航海で到達し、スペインの植民地となったが、1868年から独立戦争が起こり、スペインはキューバに自治権を認めて収拾した。だが1895年に第2次独立戦争が始まり、独立派は島の半分以上を支配したが、1898年2月米国人居留民保護のためハバナ港に停泊していた米戦艦「メイン」が突如爆発、沈没した。冷房設備のない時代には熱帯地域で停泊中の軍艦の爆薬庫や石炭庫の温度が上昇し、火薬や石炭からガスが出て爆発した事例はあったのだが、アメリカの新聞は「スペインの仕業」と世論を煽り、米国政府は4月「キューバ人をスペインの圧政から解放する」と称して宣戦布告し「米西戦争」となった。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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