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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

TOB価格引き上げの背景に行動ファイナンスの影響あり?

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第26回】 2009年5月28日
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ユニゾンがアデランスへのTOB価格引き上げ

 前々回のコラムでユニゾンによるアデランスへの予告TOBの件を取り上げた。その後、5月25日に両社が出したプレスリリースによると、買い付け予定価格を1株1000円から1200円に引き上げるとのことである。

 対抗TOBが登場してやむなくTOB価格を引き上げることはよくあるが、現在のアデランスの状況ではユニゾン以外の投資家からの対抗買収提案は表面化していない。そんな中でのTOB金額の引き上げはやや不思議な印象を受ける。もしかすると、アデランスの既存株主に株式を売ってくださいとお願いに回っている過程で、1株1000円では売ってくれる株主が少ないという感触を掴んだのかもしれない。

行動ファイナンスの観点から見た
価格引き上げの効果

 行動ファイナンスにプロスペクト理論というものがある。これは、図で直観的に確認するのが一番早いが、人間の損益に対する評価(うれしさ)は同じ絶対金額でも利益の場合と損失に対する場合は、非対称になっているというものである。絶対額が同じ利益と損失を比べると、人は損失の方が重く感じるとのことである。

評価関数の形状
出典:俊野雅司『証券市場と行動ファイナンス』(東洋経済新報社) P69

 また、利益が出ているときの評価のグラフは右上のエリアとなるが、利益がある程度に達するとそれ以上増えてもあまり評価(うれしさ)は上がらないことが見て取れる。利益が1万円から10万円に増えると評価(うれしさ)はグンと上昇するが、10万円から20万に増加しても1万円から10万円に増加した時ほどには評価は上がらない。そしてこのグラフの形状からは20万円を一括して受け取った時よりも、10万円を2回に分けて受け取った時の方がうれしさが大きいであろうことも見てとれる。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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