正林国際特許商標事務所では、新事業開発を支援するための「知財(知的財産)戦略顧問サービス」を提供している。さまざまな知財関連業務を同時並行でこなす必要がある新事業開発において、バーチャル知財部・バーチャル法務部機能を提供するサービスだ。

大きな特徴は、サービス内に「発明ブレスト」を組み込んでいる点だ。知財の専門家が参加する“壁打ち”セッションを通じて、特許出願が可能な発明を発掘するとともに、マーケティングで訴求すべき差別化ポイントを明確にする目的がある。

同事務所では2024年度より、この発明ブレストに生成AIを導入した。20年以上にわたる顧問業務で培った発明ブレストのノウハウを、最新の生成AI技術で自動化するもので、顧問サービス契約をすると、オプションでこの「発明人®(ハツメイト)」を利用できる。

「生成AI導入の理由は、発明ブレストをより効率化するためです。アイデアを特許出願に結び付けるためにはアイデアの“壁打ち”が不可欠ですが、発明人®を利用すれば、発明者自身が生成AIとの対話を通して発明内容を言語化し、新たな視点に基づくアイデアを拡張できます。また発明の効果と事業貢献についての議論もでき、標準化活動を通じた普及促進の議論も実施してくれます。さらには特許申請のプロセスで必要になる発明提案書や特許明細書の作成も可能です。このように、発明人®で“壁打ち”した後で対面の発明ブレストに臨めば、新事業開発の大幅な時間短縮が期待できます」

そう説明するのは、発明人®の開発者でもある齋藤拓也副所長だ。

生成AIが発明の“壁打ち”役に!新事業開発を支援する知財戦略正林国際特許商標事務所
齋藤拓也 副所長

生成AI「発明人®(ハツメイト)」
で発明創出を支援

発明ブレストでは、発明者の頭の中にあるアイデアをヒアリングし、それが特許になり得るかどうか判断することが重要になる。特に産業分野では、その発想が「量産可能で、汎用性がある」点が条件となる。

「例えばメジャーリーガーの大谷翔平選手は特許にはなりません。彼は唯一無二の存在で誰も代わりになれないからです。しかし、彼の球種や速度や回転数をセンサーで分析して大谷翔平モデルのピッチングマシンを作れば、それは発明となり、機械を作った人が知財権を持つことになります。その機械は、量産ができて汎用性があるからです」(齋藤副所長)

発明人®の利点は、そうしたアイデアの“壁打ち”を、誰にも気兼ねすることなく、自由自在にできることにある。発明者は多くのアイデアを持っているが、どの部分で特許を取れるのか、なかなか見極めが難しい。発明人®と対話のキャッチボールを行うことで自らのアイデアのどこに価値があるかが理解できる。

具体的には、発明者が「◯◯を発明しました」と書き込めば、発明人®は自然なかたちで「特許出願書類」の内容の議論へ誘導してくれる。議論の中である程度アイデアがまとまったと思ったら、「特許明細書を起案してください」と書き込むと、特許庁が指定したフォーマットにのっとった明細書が一気に起案される。さらに、商標登録出願の相談も可能で、ブランディング戦略や事業拡大戦略などについてもアドバイスを受けられる。

最終的に、同事務所の特許申請は対面での発明ブレストを経て実行される。特許申請における書類は調っても、アイデアの実現可能性については、知財の専門家である人間の判断やアイデアの活用まで含めた戦略的な総仕上げが必要になるからだ。

「発明人®は、中小企業やベンチャー企業の経営者はもとより、大企業のエンジニアの方にも利用していただきたいと考えています。現場の発明者は皆が知財に詳しいわけではないし、知財部の方もテクノロジー全般に詳しいわけではない。エンジニアが発明人®を利用して、自分のアイデアを言語化し発明提案書を作って知財部と共有すれば、企業は効率よく自社の知財を発掘できるようになります」(齋藤副所長)

無形資産が融資の主役に
「事業価値担保権」

同事務所では現在、26年5月25日に施行される「企業価値担保権」への取り組みにも注力している。企業価値担保権とは、不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、事業の将来性に基づく融資を後押しする制度だ。具体的には、有形資産等の保有担保のないスタートアップ企業や、中小企業の事業承継時などでの活用が想定されている。

同事務所の正林和子会長は、次のように見通しを語る。

「企業価値担保権は、現有の資産や過去の実績だけを重視する従来の考え方から、企業の無形資産を評価して融資につなげるという発想への転換です。無形資産の核となるのは知財ですが、特許権を持つ案件に限るものではなく、将来性を含めた事業全体の価値評価に軸足を置く取り組みです。重要なのは、企業全体を正当に評価してもらえる枠組みが整うこと。過去の実績が少ない企業やスタートアップにとって、大きなチャンスになると考えています」

事業承継やM&Aの活性化を促すという観点でも、いわゆる「知財金融」には以前から期待の声が多かった。後継者不在の企業であっても、事業価値を適切に説明できれば金融支援を受けられ、新たな後継者が現れたり、有利なM&Aが成立したりする可能性が広がるからだ。具体的な制度設計については、今後示されるガイドラインを待つ段階だが、26年5月の施行を見据え、すでにさまざまな動きが始まっている。

「知財の担保化が浸透すれば、金融機関にとっても融資拡大の大きな機会となります。課題は、金融機関が知財価値の評価に本格的に対応できるかどうか。地域の中小企業を顧客とする地銀や信金にとって、適切な対応は不可欠です。特に知財評価には専門家の“お墨付き”が求められます。当事務所では、知財の専門家に加え金融分野出身のスタッフもそろえており、チームで金融機関の機会拡大にも貢献できると考えています」と正林会長は語る。

同事務所は時代の変化を見据え、AI技術と知見を融合させながら、新たな価値創造の未来を切り開こうとしている。

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