1月22日、欧州中央銀行(ECB)が初の量的金融緩和を決定した。

 これを受けて、日米欧の株価が上昇した。ユーロ圏の経済状況が好転するとの期待による。果たしてそうした効果が生じるのだろうか? 以下では、量的金融緩和によって、(1)ユーロの対ドル相場を下落させる効果があること。(2)ユーロの対円相場も下落させる(円高になる)可能性もあることを指摘しよう。

ECBの資産残高を
12年水準まで戻す

 今回の決定の内容は、つぎのとおりだ。国債を含めて少なくとも1兆1000億ユーロ(約148兆円)の資産を購入する。ドラギ総裁によると、月600億ユーロ(約8兆円)の資産購入を行なう。これは、事前に市場で予想されていた500億ユーロを上回るものだ。追加購入分の80%は域内の各国中央銀行の責任で行なわれ、損失の発生に対しては各国中銀が負担する。

 緩和の実施期間は当面2016年9月までとしたが、物価上昇率目標2%の達成が見通せるまでは期間以降も緩和を続けるとした。

 この決定を受けて、日米欧の株価が上昇した。日本では、日経平均株価が1万7500円を回復し、今年初めて昨年末終値(1万7450円)を上回った。

 ECBの資産残高のこれまでの推移は、図表1のとおりだ。12年には3兆ユーロ程度あったが、その後減少し、14年には2兆ユーロ程度になっていた。ECBの今回の決定は、これを12年頃の水準まで戻すことが目的だ。

意味のない量的緩和で日本を追う欧州中銀 <br />ユーロ安・円高が進む可能性が高い