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スイス中央銀行の敗北で出始めた「日銀限界論」

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第361回】 2015年1月27日
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対ユーロの為替上限レートを撤廃
「白旗」を揚げたスイス中央銀行

 1月15日、突然スイス中央銀行(SNB)は、2011年9月から3年以上維持してきた1ユーロ=1.2スイスフランの為替上限レートを撤廃すると発表した。

 今回の措置については、事前に市場関係者の間でも話題にすら上がっていなかった。多くの投資家にとって、まさに“寝耳に水”で大きなサプライズとなった。SNBの発表によって、ユーロ売り・スイスフラン買いの注文が為替市場に殺到し、わずかの時間内でスイスフランが3割以上急騰する結果となった。

 SNBの突然の決断の背景には、足もとの為替市場でユーロ安が進む状況下、同行が単独で為替介入を行っても、設定した為替レート上限を維持できないとの判断があった。有体に言えば、SNBが為替介入について降参して、白旗を掲げたことを意味する。

 中央銀行が特定の為替レートを維持するために、大規模な為替介入を行うのはSNBのケースだけではない。1990年代初頭、英国の中央銀行(バンク・オブ・イングランド)がポンド防衛のために、ジョージ・ソロスを中心とした投資筋に戦いを挑んだり、わが国の政策当局が円高阻止のために、多額のドル買い・円売り介入を行ったことがあった。

 しかし、これらの多くのケースで、中央銀行は単独で市場の圧力を押し止めることができず、最終的には市場の圧力に屈することになることが多かった。今回のSNBの措置も、中央銀行の政策効果が限界を露呈したケースと言える。

 今回の措置によって、「いかに中央銀行であろうとも万能ではない」との見方が台頭すると、金融緩和策で景気回復を目指すわが国の日銀をはじめ、欧州の中央銀行(ECB)の政策効果の信認が揺らぐことにもなりかねない。そのリスクは小さくない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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