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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

経済危機の回復から取り残される日本、
最大の原因は製造業が抱える深刻な後遺症

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第54回】 2010年1月16日
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 前回、日本の製造業の利益の落ち込みが激しいことを述べた。経済危機による利益の落ち込みは全産業で見られた現象であるが、製造業がとくに大きな影響を受けたのである。

 法人企業統計の速報値を用いて、四半期の経常利益(季節調整済み)を見ると、【図表1】のとおりだ。非製造業は、2007年頃に8兆円程度だったものが6兆円程度に落ち込んだに過ぎないのに対して、製造業は7兆円程度であったものが、1兆円程度にまで減少している。

 ところで、四半期の売上高(季節調整済み)を見ると、【図表2】に示すように、非製造業も製造業も、07年頃に比べて2割程度減少しており、大きな違いはない。「売上高は製造業も非製造業も同じような率で落ちたにもかかわらず、利益の落ち込みは製造業がはるかに激しい」というのが、重要な点である。非製造業では売上の減少にほぼ比例して利益が落ちたのに対して、製造業では売上の減少率に比べて利益の減少率が大きいのだ。

なぜ製造業の利益の落ち込みが激しいのか?

 以上で見たのは利益の額であるが、粗利益と営業利益の売上高に対する比率について、製造業と非製造業を比較してみよう(【図表3】参照)。

 非製造業においては、粗利益の売上に対する比率は、経済危機のなかでむしろ上昇しているのである。これに対して、製造業においては、粗利益の売上に対する比率は、経済危機によって急激に下落している。前回述べたように、これが営業利益率を低下させた主要な要因だ。つまり、非製造業は、売上減に対して売上原価を比較的容易に調整できるのに対して、製造業はそうした調整が難しいということだ。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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