携帯通信参入は
「社是」に従う自然な流れか
グーグルが、携帯通信サービスへ参入するという。
これはおもしろい展開になるだろう。なぜならば、グーグルは価格を安くする、業界に破壊をもたらす、という2つのことを常に眼中に置いているからだ。
グーグルが携帯通信サービスに参入するのは、言ってみれば当然のなりゆきだったと言える。同社はかなり以前から通信サービスに関心を持ってきた。
最初にやったのは、2006年に、同社のお膝元である本社がある米カリフォルニア州のマウンティンビューでの「パブリックWi-Fi」の敷設だった。同市のダウンダウン地区へ行くと、電柱にWi-Fiの通信機が備えられているのが見えた。Wi-Fiがまだ珍しいころにこんな設備が整い、マウンテンビューの市民は本屋やカフェでその恩恵を受けていたものだ。
その次にやったのが、2012年から始まった光ファイバーサービスの「グーグルファイバー」だ。今でも全米の限られた3都市で展開されているだけで、先頃さらに4都市への拡大を発表したくらいだが、これも人々が待ち望んでいるものだ。
普通のブロードバンドの100倍も高速という謳いで、ギガビット級のプランで1ヵ月80ドル、ケーブルテレビに似たテレビチャネルのサービス付きで120ドルの値段だ。全米への拡大は着実に進んでいるようである。
それ以外にも、グーグルは驚くような通信技術へ手を出している。ドローンや宇宙衛星による通信だ。これらは近未来的な構想だが、ブロードバンドが広がらない発展途上国に向けて提供できるようなサービスを考えているのである。
こうしたことすべては、「万人が情報にアクセスする」という同社の社是を貫くものだろう。検索サービスから始まったものの、これを確かなものにするには、結局は通信の大元を抑えなければならないという同社の意識の変遷が感じられる動きだ。
また今日風に言えば、これは逆にグーグル自体が「万人のデータにアクセスする」ための方策なのかもしれない。今後データは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器だけでなく、IoTやスマートシティーとのつながりからも取得可能になる。モバイル通信サービスを抑えておけば、人々がモノや都市とどう関わっているのかもわかるようになるだろう。