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医療・介護 大転換

認知症になると精神科病院に連れて行かれる?

「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が描く逆行ケア

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第23回】 2015年2月4日
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 高齢者になるといろいろな生活上の障害が起きてくる。多くの人が最も恐れているのは認知症だろう。近年、認知症に関する映画や小説、あるいは政府の発症者数などの情報が一段と増えた。しかし、認知症はその発症原因や根治薬が分からないため、不安感が増殖される一方だ。

 それは「認知症になったら大変」という言葉に集約される。関係者の努力で「認知症になっても暮らし続けられる地域」が各地でニュースになってはいるが、まだまだ圧倒的に少数派だ。そこへ、国民の不安をさらにかきたてるような施策が始まろうとしている。

 「岩盤規制」の打倒を掲げている安倍政権だが、足元の「岩盤病院」の抵抗を崩せないことによるものだ。加えて、欧米基準に達しない国家戦略として海外からの批判も免れそうもない。国際会議で胸を張ったうえでの施策だから始末が悪い。

「精神科病院」の関与が大きくなった認知症施策

 1月27日に政府が発表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」のことだ。厚生労働省が2013年度から現在も進めている「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」に代え、この4月から着手する。

 昨年11月に開かれた国際会議「認知症サミット後継東京会議」の場で、安倍首相が「初めての国家戦略として認知症施策を作る」と大見得を切り、急遽、練り上げることになった。内閣官房や農林水産省、国土交通省、警察庁など10府庁の共同作成と謳い、国を挙げて取り組む姿勢を見せている。大がかりな舞台仕立てで、「拙速」の声を封じ込めた。

 まず始めに「基本的な考え」として「認知症の人の意志が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」と宣言。従来から言われていることで新味はない。

 続いて「普及・啓発」「介護者支援」「やさしい地域づくり」など7つの柱を据えて具体的な手立てを列挙している。その内容は、1月7日に厚労省が自民党に示した当初案と全体としてはほぼ変わらない。引き継いだ旧オレンジプランをほぼ踏襲。認知症サポート医などの達成目標数を引き上げるなど、一見前向きな柱建てだ。詳細はこの連載の前号でも触れた。

 ところが、柱の2番目「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」の中で、精神科病院に関わるところが劇的に大変わりしている。7日の当初案が、自民党関係者に説明している間に手が入り、27日の正式文書となった。

 日本の精神科病院は、かねてから諸外国と比べて、その「異常性」は指摘されてきた。ベッド数があまりにも多いことだ。OECD諸国は人口1000人あたり1床以下がほとんどだが、日本は2.8床もある。3倍近い。

 各国ともこの十数年の間に精神科病院のベッド数を減らしてきた。日本だけが突出して高止まりのままだ。全世界の精神科ベッドは約185万。そのうち20%近くが日本にある。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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