経営 X 人事

社員のやる気に火をつける
戦略人事のコミュニケーションとは

前回は、「戦略人事が具体的に行うべき9つのこと」より、1.「社長を育てる」ということについて、解説しました。今回は、2.「会社のミッション・ビジョンを伝え、徹底する」ことと、3.「戦略を、心を震わすストーリーに変える」ことについて解説します。

“普通の人”が共感できる言葉で
ビジョンを伝える

 まず、2.「会社のミッション・ビジョンを伝え、徹底する」ことについてお話ししましょう。

 これまで述べてきた通り、人事の戦略は、常に“最高のパフォーマンスを出すこと”につながっていますが、社員が最高のパフォーマンスを出すためには、会社がどちらの方向に向かっているかを知る必要があります。
 したがって、会社が目指す方向性を社員に伝えることも、戦略人事の重要な役割です。

 会社の方向性を社員に伝える際、私が特に意識していることは、“ほとんどの社員は普通の人である”ということです。

 会社は、理解の早い人ばかりで構成されているわけではありません。普通の人たちが、普通に考えて、一生懸命働いているのが会社です。
 ですから、そうした普通の人たちに、経営トップがこれからやろうとしていることが、きちんと伝わっていることが大切なのです。

 例えば当社の場合、「売上高3兆円、営業利益利率8%」を目標に掲げていますが(2014年11月時点)、この数字だけを示したところで、社員はやる気にはならないでしょう。

 現在、当社の売上高は2兆円がほぼ見えているところにあります。そうなると、3兆円を目指すのは、経営サイドから考えると当然で、本音を言えば、もっと高く設定したいところです。

 一方、社員からしてみれば、今から1兆円以上伸ばさないといけないわけですから、「本当に目標が達成できるのだろうか」や、「なぜそこまで高い目標を掲げるのか」といった不安や疑問も生じるでしょう。

 そこで、「住生活という業界で、売上高1兆円を超える企業は他にもある。しかし、3兆円規模の企業は、まだない。だから3兆円を実現すれば、世界一の企業になれる。我々はそこを目指しているのだ」などと、目標数値の根拠をしっかり伝えれば、社員も納得できるわけです。

目標数値の根拠を語るのも
人事の仕事

 同様に、「営業利益率がなぜ8%必要なのか」という理由も説明します。

 例えば、企業は単に利益を上げればいいというわけではありません。世の中には、いろんな予期せぬ事態が起こります。地震や風水害などの自然災害は、その最たるものでしょう。

 そうした予期せぬ事態が起こって、企業がダメージを受けても、なんとか生き残れる利益水準というものがあります。それは、1%、2%というレベルではなく、8%くらいは必要です。

 さらに、企業は、成長することによって、いろいろな新しいことにもチャレンジできます。しかし成長が止まってしまえば、チャレンジする機会も失ってしまうのです。

 このように、目指す売上高や利益率の根拠や、それを目指す理由をストーリーで示すことで、社員は、なぜ達成しなければならないのか、を理解できるでしょう。

 何の説明もなく、数値目標を繰り返しただけでは、他人事のように思ってしまいます。

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八木洋介

1955年生まれ、京都大学卒業。1980年日本鋼管(NKK、現JFEスチール)に入社。人事などを歴任し、1999年から13年間はGEに勤務。複数のビジネスにおいて日本およびアジアの人事責任者を歴任。2012年4月より現職。著書に金井壽宏氏(神戸大学教授)との共著『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社)がある。


勝つ組織をつくるための戦略人事塾

NKKやGEで人事の要職を歴任し、現在はLIXILグループで執行役および人事の責任者を担う八木洋介氏が、経営に資する「戦略部門としての人事」とは何かを解説する。

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