はじめに
従業員一人ひとりが健康でいきいきと仕事に取り組むことは、従業員の幸せにとっても、組織全体の生産性にとっても重要です。
ところが、第二次世界大戦後から展開されてきた我が国の職場のメンタルヘルス対策では、従業員の健康には注目するものの、従業員がどの程度いきいきと仕事をして生産性を上げるかには、あまり注目していませんでした。むしろ、生産性の向上を促すことで、かえって健康を損ねるのではないかと懸念すらしていました。
一方、組織マネジメント(つまり経営側)では、従業員一人ひとりの生産性には注目していましたが、従業員の健康にはあまり注目していませんでした。経営は、従業員の健康状態に配慮することで、かえって生産性が落ちるのではないかと懸念していました。その結果、これまでのメンタルヘルス対策と組織マネジメントとはお互いに協調することなく、展開されてきました。
ところがその後、産業構造の変化(サービス業の増加)、働き方の変化(裁量労働制など)、情報技術の進歩など、従業員や組織を取り巻く社会経済状況は大きく変化しています。こうした変化に組織が対応して生き残っていくには、従業員一人ひとりが健康“かつ”いきいきと仕事に取り組むことが重要になってきます。
つまり、産業保健にとっても経営にとっても発想の転換が求められるようになったわけです。