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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
【第32回】 2009年8月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

20年で1000万人も増えた非正規雇用者
その年金難民化がもたらす制度の危機

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 前回、非正規労働者に関していくつかのことを述べた。要約すれば、つぎのとおりである。

【図表1】正規・非正規雇用者(単位:万人)
資料:総務省

(1)1980年代末以降の日本の雇用者の増加は、ほとんどが非正規雇用者によるものであった。正規雇用者は97年までは増加したが、その後ほぼ傾向的に減少した。その結果、87年と最近とを比べると、3300万人程度でほとんど変化がない。他方で、非正規雇用者はこの間に傾向的に増加を続け、87年には711万人であったものが2009年には約1700万人と、約1000万人増加した。つまり、雇用者総数は87年から最近までに約1000万人増加したのだが、それは非正規雇用者の増加による(【図表1】参照)。

(2)日本企業が非正規雇用者を増やしたのは、社会保険料の雇用主負担を回避することが最大の目的だったのではないかと考えられる。その証拠に、08年秋以降の急激な雇用減少のなかで、非正規雇用者だけが削減されたわけではない。これは、企業が人員整理の容易さだけを重視しているのではなく、人件費コストを重視して、手続き的には面倒でも正規雇用者を整理した結果であると考えられる。

 つまり、日本の雇用問題においては、社会保険制度がきわめて重要な意味を持っているのだ。そして、以下に述べるように、日本の年金制度は、雇用問題によってきわめて深刻な影響を受けている。雇用と社会保険の問題は密接に関連しており、一方を無視しては他方を議論することができない。

増加した雇用者の一部しか厚生年金に加入しなかった

 以下では、雇用と社会保険の関係を、より直接的に分析することとしよう。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』等、最新刊に『期待バブル崩壊』がある。野口悠紀雄ホームページ

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