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山崎元のマネー経済の歩き方

「安心」が投資に与える困った影響

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第96回】 2009年9月28日
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 ジョージ・A・アカロフとロバート・J・シラーの2人による『アニマルスピリット』(山形浩生訳、東洋経済新報社)をおもしろく読んだ。主にマクロ経済に対する人間心理の影響を説いた好著だ。これまでの経済学が扱わなかった重要な要因として、「安心」「公平」「腐敗と背信」「貨幣錯覚」「物語」の5つについて語っている。いずれもおカネの運用に関係する概念なので、その観点から読んでもおもしろいのだが、特になるほどと思ったのは、人は対象や状況が「安心」であるか否かによって極端に行動が変わるという指摘だ。

 人はリスクとリターンのバランスを厳密に比較するようなかたちで意思決定するのではなく、「それは安心か?」というレベルで安心できれば、たとえば住宅ローンを組むし運用商品にも投資する。逆に、「安心」が損なわれると、リスクに対する態度は急変し、金融機関同士はおカネを貸さなくなるし、個人は消費行動を萎縮させて、マクロ経済的にはケインズの乗数効果の逆とでもいうべきマイナスの「安心乗数」効果が働く。したがって、現在のような状況では、金融機関を含む個々の経済主体が「安心」できる状況や「物語」を与えることが大事だという。

 投資家も、安心なのか、そうでないのか、といった2分法的な意思決定をすることが多い。

 たとえば、利回りが数パーセントに及ぶ個人向けの社債などは、その利回りをデフォルト確率と比べて投資するかどうかを判断しなければならないはずだが、「有名な会社だから、大丈夫だろう」とか「政府は銀行をつぶさないだろう」といった物語に対する安心感で決めてしまっている個人が大半だろう。個人が社債の信用リスクについて判断できる材料と判断力を持っていることは稀だろうし、だからこそ、そこにつけ込んで個人を対象に社債が発行されている。発行者側が払ってもいいと思うような利回りでは機関投資家が買ってくれないから、手間のかかる個人を対象に発行しているのだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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