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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機
【第12回】 2015年5月11日
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齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

IoTの「セカンダリーエフェクト」を
想像してみよう

もはや、モノづくりだけでは
儲からない時代に

 今回は、最近よく聞かれる「IoT(モノのインターネット)」について、日本の欠落、勝機を考えてみたいと思います。

 あらゆるモノをインターネットにつなぐIoTは今に始まったことではありません。電気を使う製品にはほぼすべてにコンピュータが組み込まれています。言わば、冷蔵庫は冷やすコンピュータ、テレビは動画を発信するコンピュータ、クルマは動くコンピュータといったところです。

 モノをインターネットにつないで利便性を高めるという点では、皆さんが思っている以上にIoTは世の中に普及し始めているといえるでしょう。クルマが常時インターネットに接続する「コネクティッド・カー」もその1つです。

 こうしたなか、日本企業の大きな問題点は、モノづくりへのこだわりが強すぎることです。

 たしかに日本は、精密な部品を造ってモーターを組み立てるといった純粋なモノづくりをリードしてきました。しかし、モノとソフトウェアを組み合わせるシステム製品の時代になった今、モノづくりの利益の割合はソフトウェア(システム)のわずか10分の1程度。さらに今後、IoTビジネスが進展すると、利益は100分の1になってしまうかもしれません。

パーツは突き詰めれば“砂”
いずれ価格競争に巻き込まれる

 そのいい例がオーディオです。カセットテープからCD、USBを経て、iPod、クラウドへと、どんどん進化しています。

 かつて日本の大企業、ソニーはカセットテープでクオリティの高い音を出すウォークマンを開発して大ヒットさせました。続いてCDで成功を収め、その後、DVDやブルーレイを生み出しましたが、躍進は見られません。iPodがインターネットとつながり、それがクラウドに進み、急速に普及した現状に追いついていない感があります。

 急速に進化するコンピュータによってイノベーションの定義が変わり、モノづくりの技術だけではもう勝てない時代になっているのです。モノづくりに加え、ソフトウェアやシステムの創造がいかに重要か、もう言うまでもありませんね。

 このように「素材→パーツ→製品→システム→サービス」と、右にいくほど付加価値を増すバリューチェーンのなかで、いつまでも素材やパーツのレベルの高さを自慢するのはいただけない。先に述べたように、どんどん儲からなくなるからです。

 IoTに欠かせないセンサーなど、半導体部品は突き詰めれば、砂という無尽蔵の資源です。

 半導体の材料に使われるシリコンは99.9999…%まで高純度化したケイ素です。このケイ素は、砂の主成分である二酸化ケイ素(シリカ)として自然界に存在し、地球上で酸素に次いで多いといわれています。

 ケイ素の純度を高めればより高性能な半導体がつくれるかもしれませんが、そこにこだわっていても明るい未来は見えません。今は世界に誇る技術であっても、いずれ新興国などでより安く作られるようになり、どんどん利益は薄くなることでしょう。

SPECIAL TOPICS

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。

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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

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