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山田厚史の「世界かわら版」

日本は独立国か?
「脱却」と「従属」二人いる安倍晋三

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第84回】 2015年5月7日
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 歓迎晩餐会も共同記者会見もなかった前回の「冷遇」と打って変わり、今回の訪米は「歓待」で、米議会で演説までさせてもらった。安倍首相は意気揚々と帰国。首脳会談の「成果」を囃すメディアは少なくない。

 だが「アメリカに喜んでもらう」ことが対米外交なのか。歓待と引き換えに日本は自衛隊を米軍の助っ人として差し出した。世界秩序を武力で維持しようという米国に戦力を提供し、付き従うことが日本の国益なのだろうか。

 「日本を取り戻す」「戦後レジームからの脱却」と勇ましげな言葉を使う安倍首相が、オバマ大統領の前では「希望の同盟」「不動の同盟」と歯の浮くよう言葉ですり寄る。どうも安倍晋三は二人いるように見えてならない。

戦後「脱却」と対米「従属」
二重人格の安倍政権

 右派の論客で漫画家の小林よしのりは、首相の議会演説を「愚劣でバカバカしい」と批判し、次のように述べていた。

 「過去の日本を『悪』とする『東京裁判史観』に嵌ってしまっていて、今後もアメリカを宗主国として、アメリカが起こす侵略戦争にはすべてついてゆくと宣言したようなものである」

 憲法改正草案を掲げ右派バネを効かせて自民党総裁に復帰した安倍晋三に、右翼が期待したのは、第二次世界大戦の戦争責任を日本に課した「東京裁判史観」の否定だった。

 列強の利害が衝突した大戦の責任を敗戦国だけに負わすのは不当、という主張である。

 アメリカ主導で進んだ東京裁判は日本を始め世界で受け入れられた。日本の戦後復興はこの反省から始まった。

 歴史は常に見直されるものだが、東京裁判の在り方に異議を申し立て、「日本だけが悪いわけではない」という歴史修正を試みようという勢力が日本に増えている。東京裁判を受け入れることは「自虐史観」だと主張する。

 安倍首相の「戦後レジームからの脱却」は何をしたいのだろうか。先の大戦を「侵略」と認めたがらず「謝罪」を嫌う。そんな態度から、政治家安倍晋三は東京裁判史観からの脱却を目指している、と見る人は少なくない。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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