4月30日の金融政策決定会合後に記者会見へ臨んだ黒田東彦・日銀総裁。大方の予想通り、金融政策は現状維持で追加緩和の発表はなかった
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 日本銀行は4月30日の金融政策決定会合で予想通り現状維持を選択した。もし日銀が追加の金融緩和策を決めていたら、環太平洋経済連携協定(TPP)反対派の米議員たちが「日本は輸出を有利にするためにまた円安誘導を行った」と色めき立って、せっかくの安倍晋三首相の訪米が台無しになっただろう。

 株式市場や海外の市場関係者の間には、その後も根強い追加緩和期待が存在している。しかし、国内経済にとって追加緩和策は本当に望ましいのだろうか。日銀が2年前にバズーカ緩和策(量的質的緩和策)を開始して以来、所得階層によって消費者の意識の変化に大きな違いが存在している点が心配される。

 2013年4月と15年3月の消費動向調査(内閣府)における「暮らし向き」を比較してみよう。「良くなる」「やや良くなる」の合計から「やや悪くなる」「悪くなる」の合計を差し引いた数値は、次のように推移した(以下、前者は13年4月、後者は15年3月)。

 年収950万~1200万円未満はマイナス12.6%→マイナス17%(4.4ポイント悪化)、550万~750万円未満はマイナス17.5%→マイナス28.7%(11.2ポイント悪化)、300万円未満はマイナス34.5%→マイナス48.3%(13.8ポイント悪化)だ。所得が低くなるほど、危機感はこの2年で強くなっている。

 同調査によると、「収入の増え方」「雇用環境」「資産価値」のいずれも、所得が低いほど楽観的な見方は少なくなっている。さらに注目すべきことに、インフレ予想の相違も一段と拡大している。