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小宮一慶の週末経営塾

十数年で売上を50倍も伸ばした経営者の「主力事業を捨てる覚悟」

小宮一慶
【第4回】 2015年5月16日
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デジタル化の波に飲まれた
アナログ企業の決断

 前回まで、「企業の方向づけ」に関して説明してきました。方向づけとは「戦略」ですが、もう少し具体的に言うと「何をやるか、何をやめるか」を決断することです。会社にとってこの「方向づけ」を誤ることは致命傷になりかねません。

小宮一慶 小宮コンサルタンツ代表

 経営者にとって最も大切な「経営という仕事」ですが、今回は、社会の変化を見据えて「何をやるか、やめるか」の決断で大成功した会社の事例をご説明しましょう。

 その会社は、京都に本社があるプリントパックという印刷会社です。同社は、印刷不況と言われて久しいなか、この十数年間で売り上げをなんと50倍も伸ばしました。海外での展開もしていません。なぜ、こんなに売り上げ増が可能だったのでしょうか。

 プリントパックは、もともとは、製版事業とわずかに印刷事業を行っていました。

 しかし、製版事業は、十数年以上前から、パソコンの普及によりデジタルデータ化が急速に進みました。プロの職工さんに頼らずとも、パソコン1台と然るべきソフトがあれば、カタログや冊子、チラシ、ハガキ、名刺などの製版が、個人でも、比較的簡単にできるようになったのです。このままでは、アナログデータの製版事業が衰退するのは目に見えています。

 そこでプリントパックはどうしたかというと、思い切って製版事業を他社に譲り、印刷事業1本で勝負することにしたのです。

 お客さまは、デジタルデータは自力で作ることはできても、印刷に関しては、特にそれが大量なら、専用の機械がなければできませんから、どこかに頼むことになります。同社はここに目をつけ、お客さまに、デジタルデータをインターネット経由で入稿してもらい、そのデータをきれいに安く印刷してお届けするというサービスを開始したのです。

 製版事業をやめる。これは、「言うは易し行うは難し」です。それまで、同社の主力だった事業をやめてしまうのですから、相当な覚悟と勇気を伴います。社内にももちろん反対はあります。

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小宮一慶

京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス (現、セントケア)を経て独立し現職。名古屋大学客員教授(平成26年度後期)。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」を元に、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年100回以上講演を行う。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』(ディスカヴァー21)など著書は100冊を超え、現在も経済紙等に連載を抱える。


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経営課題を抱えて日々悩む経営者に向けて、数々の企業経営者に伴走してきた経営コンサルタントの小宮一慶氏が課題解決の「ヒント」を提供。どんな業種にも通じる経営の原理原則をおさえながら、経営者はどうあるべきか、実際の経営現場で何を実行すべきか、を語る。

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