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英米では今や自然食品スーパーの代名詞!
ホールフーズが示す強い小売業のヒント

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第56回】 2009年8月12日
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ホールフーズ・マーケット
アメリカには、「溢れるように陳列する」という小売店手法があるが、ホールフーズは極端な方法でそれを実行している。大店舗で扱う品数は5万点以上あるという。

 ホールフーズ・マーケットの店内へ足を踏み入れると、まずはその壮観ぶりに唖然とする。

 陳列台からこぼれ落ちんばかりに積み上げられたカラフルなオレンジやイチゴ、ぶどうなどのフルーツ、棚にぎっしり並べられた緑の野菜。これでもか、これでもかと豊かな食材が目に迫ってくる。ホールフーズのショック効果は、まずこの入り口のところで始まる。

 アメリカには、「溢れるように陳列する」という小売店手法があるが、ホールフーズは極端な方法でそれを実行している。この過剰な陳列は入り口だけでない。チーズ売り場、パン売り場、調理済みの総菜を売るデリ売り場、店内のどこを見てもホールフーズは食品で溢れかえっているのだ。大店舗で扱う品数はなんと5万点以上。その迫力に押されて、つい財布の口を大きく開けてしまう消費者は多い。

 さらに意外なのは、このホールフーズ・マーケットが、全米に280店以上を構えるオーガニック食品スーパーという点だろう。オーガニック食品店と言えば、飾り気がなくて地味と相場が決まっていたものだが、ホールフーズはそのイメージをすっかり変えて、アメリカの消費者の人気を得た。

 ホールフーズ・マーケットの創業は1980年。テキサス州で自然食品店を営んでいた2組の経営者が合併したのがスタートだ。当時のスタッフ数はたった19人。だが、その後30年近くの間に驚くべき展開を見せ、マンハッタンの中心街を含む全米各地とイギリスに出店するメジャーなスーパー・チェーンに成長したのだ。

 つい数年前までは一部のナチュラリストたちの主義にすぎなかった「オーガニック食品」は、今や230億ドル産業(2008年)にまで拡大した。その成長の一翼をホールフーズ・マーケットが担っているのは、誰もが認める事実だ。今や、安物売りを謳うウォルマートですら、時代の波に遅れまいとオーガニック食品に手を出し始めたくらいだ。

 ホールフーズの人気ぶりは、2006年から数年続いた住宅バブルの際、同社店舗を1階に誘致するのが、コンドミニアム建設成功の秘訣とされたことにも現れている。料理嫌いのアメリカ人が、仕事帰りにちょっと立ち寄ってデリで夕食を買ったりするのに重宝がられたのだ。普通なら、階下にスーパーが出店しているコンドミニアムなど、衛生や騒音上、眉をしかめるものだが、おしゃれで洗練されたホールフーズは、そんなイメージを一新させたのだ。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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