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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

バラック・オバマを大統領に選んだアメリカ民主主義の真骨頂

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第12回】 2008年11月7日
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 アメリカの第44代大統領がバラック・オバマ氏に決まった。米国の東部時間で11月4日の午後10時だった。アメリカに初めて黒人の大統領が誕生した瞬間である。そのときに、シカゴのグラント・パークには12万5000人が集まり、地元上院議員オバマ氏の当選を祝福した。演説が始まったときには既に11時を回っていた。

 「私が生きている間に、こんな日が来ると思わなかった」

 カリフォルニア州政府の要職を30年勤め、黒人として初めてサンフランシスコ市長を勤めた74歳のWillie Brownの言葉である。どんなに頑張ろうともSecond-class Citizen(二流市民)としか見なされなかったアメリカの黒人。国政の頂点であるアメリカ合衆国大統領に黒人が就任することは、彼らにとって予想もしなかった出来事であるに違いない。

 「人種差別がなくなったと言うことか?」との質問に、「人種差別はなくならない。しかし、大統領の職を務めるのに適格な人材がいれば、黒人でも大統領になれるようになったということだ。」とWillie Brownは答えている。アメリカ国民の79%は白人で、黒人とヒスパニックはそれぞれ12%である。「適格な人材」であれば、人種の壁を乗り越えられる。今回の選挙はこれを初めて実証した。

専門家の意見を聞いた上で
自分の判断を固めるオバマ流

 筆者もオバマ氏が「適格な人材」であることに疑いを持たない。アメリカ国民は3回に渡ってオバマ候補とマケイン候補がテレビ討論をするのを見た。オバマ氏が分析的で説明的に話すのに対し、マケイン氏は分析の部分が欠けていて、すぐに掛け声になる。オバマ氏には人の話を聞く余裕がある。相手の言うことを聞いた上で効果的な反論をする。黒人候補のほうが白人候補より説得力があるのを国民は討論会を通じて目にした。

 10月29日にビル・クリントン元大統領がオバマ候補の応援演説をしたことがある。金融危機が発生したときのオバマ氏の対応について裏話を暴露していた。オバマ氏は自分で分からないことがあると、その道の専門家に意見を聞いて自分の判断を固めるという。オバマ氏は金融危機の真っ只中で、毎日ポールソン財務長官と電話で意見交換をしていたと関係者は証言する。マケイン氏は同じ共和党陣営にいながらポールソン氏に接触しなかった。

 ブッシュ大統領が自分の考えで突っ走るのに対し、オバマ候補は人の意見を聞きながら自分で判断する。外交面ではブッシュ大統領がアメリカの利益だけを優先した結果、国際社会で孤立することになった。ある調査で、主要国22ヵ国の首脳にオバマ候補とマケイン候補のどちらが大統領になるべきか聞いたところ、22ヵ国首脳全員がオバマ候補を支持すると回答したという。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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