なぜ肝心なときに失敗してしまうのか、なぜ幸せを自ら崩壊させてしまうのか……。あなたには、そんな傾向はないだろうか? 実はこれらはすべて思い込みからなる「人生脚本」のせいだと語るのは、「人生の99%は思い込み」の著者である心理学者の鈴木敏昭。
前回まで、人生脚本を構成する禁止令とドライバーを紹介した。では実際に、人生脚本を推し進めるものとはなにか。脚本を演じる舞台ともいえる「ゲーム」という考え方を紹介しよう。

人生脚本によって
「ゲーム」が展開される

あなたは知らず知らずのうちに<br />人生を不幸に導く「ゲーム」を続けてしまう

 人生脚本は、主に幼少期に書き上げられる。それも無意識のうちに。
 禁止令などによって、子どもは人生に対する「構え」を作り上げる。人生の脚本は、「禁止令」や「ドライバー」、そして「構え」によって作り上げられる。

 こうして出来上がった脚本を前に進めるのが「ゲーム」である。心理学では「人生ゲーム」と呼ぶこともある。

ゲームとは報酬を得るためにある行動を繰り返すことだ。

 私たちは無意識に、自分の人生を成立させるためのゲームに参加している。愛情やお金や幸福感といった報酬を得るために、日々行動しているわけだ。

自分の構え・世界のとらえ方を
裏付けるためのゲーム

 もちろん、人生にとって正しいゲームであれば問題はない。お金を稼ぐために仕事で成功する。愛情を得るために恋愛というゲームを続ける。こうしたゲームは何ら問題はないだろう。

 しかし、ときにゲームは悪い方向にも作用する。

 たとえば、他人を困らせたり、嫌な思いをさせたりすることで満足感を得る。相手の気を引くために、問題のある行動を取る。自分に注目を集めるために遅刻をするなど、こういったパターンもゲームとして成立するのだ。

 なぜ、ともすれば自分を不幸にも導くようなゲームに自ら参加してしまうのだろうか? 

 人は誰しも「他人から愛されたい」「自分を認めてもらいたい」という願いを持っている。幼いころ、親にあまりかまってもらえなかったり、親に厳しく育てられたりした人は、愛情に飢えている。

 そういう子どもは無意識に「無視されるよりは、ネガティブにでも相手の関心を持たれたい」と感じてしまう。そこで、親にふりむいてもらうためにいたずらばかりをして近所でもめ事を起こしたり、嘘を平気でついたりする。
人は怒られるよりも、無視される方がつらい。相手の関心を引くために、ゆがんだ行動を起こしてしまうのだ。それが習慣になると、大人になってもゆがんだ行動で相手の関心を引こうとする。

 また人には、世界のとらえ方である「自分の構え」を確認するためにゲームに参加するという一面もある。

 自分の構えには、以下の4つのパターンがある。
・「私もOK、あなたもOK」…この世のものすべてに価値があると認識。幸福な人生脚本
・「私はNG、あなたはOK」…自分に自信がなく、自己承認できない。卑屈になりやすい
・「私はOK、あなたはNG」…おまえのものも俺のもののジャイアンタイプ。自己中心的
・「私はNG、あなたもNG」…人生が無意味だという虚無感を持つ。自分も他者も否定

 人はこの4つのパターンのいずれかに当てはまるわけだが、この自身の構えを確認するために、問題行動を起こす。

 たとえば、同僚に対して一々「それっておかしいんじゃない?」と突っかかってしまうのは、「私はOK、あなたはNG」の構えを確認したいのだ。相手が傷ついた表情をしたり、苛立ったりすれば、自分の立場が強いのだと実感でき、満足する。

 自分も相手もNGであるという構えを持った人は、世界をネガティブに捉えているため、そのネガティブな世界を証明するためにゲームを進める。

 よって自滅的な行動を取ることである種の満足を得るわけだ。そして、構えを確認するたびに、人生は「強化」されていく。それは、自分の世界観が正しいと証明するための作業なのだ。

次回は、具体例を交えながら人生ゲームの公式について紐解いていく。