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人生の99%は思い込み――支配された人生から脱却するための心理学
【第4回】 2015年6月3日
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鈴木敏昭 [心理学者]

あなたを苦しめる
幼少期の「13の禁止令」

なぜ肝心なときに失敗してしまうのか、なぜ幸せを自ら崩壊させてしまうのか……。あなたには、そんなところはないでしょうか? 実はこれらはすべて思い込みからなる「人生脚本」のせいだと語るのは、「人生の99%は思い込み」の著者である心理学者の鈴木敏昭。
人生脚本は幼少期に構築されることが多く、その根底には「禁止令」があるという。代表的な13の禁止令について訊いた――

ネガティブな脚本をつくる
13の禁止令

 前回まで、幼少期の禁止令が人生に及ぼす影響を確認してきた。
 そうした禁止令の中でも、アメリカの医学博士で国際交流分析学会の会長も務めたグルーディング夫妻は、特に人生に大きな影響を与える禁止令を紹介している。これらの禁止令の影響を強く受けている人は、ネガティブな人生脚本を持ってしまいがちなのだ。

 以下に、代表的な13の禁止令を解説する。自分がどの影響を受けているか考えながら読み進めていただきたい。

(1)「何もするな」「実行するな」

 親のしつけが厳しかったり、過保護で些細なことまで注意したりするような家庭で発生しやすい禁止令だ。
「木登りなんて危ないこと、やめなさい」「あの子と遊んではいけません」「怪我するからサッカーはやめなさい」などと行動を規制されるたびに、「自分は何もしないほうがいいんだ」という禁止令をつくってしまう。
 この禁止令がある人は、従順な子どもであろうとし続けた結果、大人になっても積極性に欠け、人の意見に従ってばかりになる傾向が強い。
 職場で「指示待ち型の社員」になりがちな人は、この禁止令が影響しているかもしれない。幼い頃から親の言いなりに動くことしかしていなかったので、自分でどう行動すればいいかを考える習慣がない。そのため、上司や先輩に指示をしてもらえないと、自分では何をしていいのかわからないのだ。

(2)「お前であるな」

 「本当は、女の子が欲しかった」と言われて育った男の子や、母親が「女は損よね」とよく言われていた女の子など、自分の性別やアイデンティティを否定された経験がある人が持ちやすい禁止令だ。
 この禁止令があると、自分の性や自分自身に自信が持てなくなる
 異性の友だちばかりで同性の友だちが少ない人や、部活やサークルなどで同性だけの集団にいるのが苦手だった人は、この禁止令の影響を受けている可能性が高い。
 また、自分に自信がないので、まわりの評価や常識、世間体に左右されやすい

(3)「子どもであるな」

 「あなたはお姉ちゃんなんだから、しっかりしなさい」「もうお兄ちゃんなんだから、泣かないの!」などと言い聞かされた、下に弟や妹がいる人がつくりやすい禁止令だ。
 この禁止令を持つ人は、早い段階で自立を促され、子どものころにのびのび自由に過ごせなかったため、いわゆる「堅物」になりやすい傾向がある。
 合コンやバーベキューなどでせっせと料理を取り分けたり、お酒がなくなりそうになったら注文したり、みんなの世話をして自分はまったく楽しんでいない人も、この禁止令に縛られての行動かもしれない。
「自分がやらねば!」という責任感が強い余り、それが足かせになることもあるのだ。

(4)「成長するな」「親から自立してはいけない」

 (3)と逆で、「全部お母さんがやってあげるわよ」と過保護に育てられたり、末っ子で甘やかされて育ったりした人が持ちやすい禁止令だ。
 この禁止令があると、「子どものままでいるために、何もできないほうがいい」と考えるようになる。
 いわゆる「マザコン」も、これに当てはまるだろう。
 近頃は親が子どもの代わりに婚活し、親同士がお見合いもして結婚相手を決めてあげるというケースもあるらしい。これでは、大人になっても「成長するな」の禁止令から抜け出せない人が増えるのも、当然かもしれない。

(5)「感じるな」「感情を表に出してはいけない」

 転んで、痛くて泣いているのに親に無視されたり、「我慢しなさい!」と抑え込まれ、素直に欲求や感情を出せなかったりした人が持ちやすい禁止令だ。
 この禁止令があると、自分の感情を抑えこむのが癖になり、物事に無関心・無感動になってしまう
泣いたり、怒ったりすることがなかったり、声に抑揚がない、表情に乏しい人は、この禁止令の影響を受けている可能性がある。

(6)「考えるな」

 「親に口答えするな!」「黙って言うことを聞いていればいいんだ!」と子どもに一喝する、威圧的な親は少なくないだろう。始終ヒステリックに怒鳴りちらす親のもとで育つと、この禁止令は生まれやすい。自分で考えるのを放棄してしまうのだ。
 この禁止令がある人は、論理的に物事を考えたり、冷静に判断することができなくなったりする。占いや迷信などを盲目的に信じ込む人は、「考えるな」禁止令に支配されているのかもしれない。

(7)「近寄るな」

 「忙しいから後にして」「静かにしてちょうだい」など、親に距離を置かれたり、あまりふれあう機会がなかったりする人が持ちがちな禁止令である。
 この禁止令があると、親とおしゃべりし、自分の気持ちを聞いてもらおうとするのを避けるようになる。すると、大人になってもプライベートや本心を周囲に打ち明けられないタイプになる。
 仕事上のトラブルや悩みがあっても、上司や同僚に相談せずに一人でなんとかしようとしてしまう人や、嫌なことがあっても「自分が我慢すればいいんだ」と考えてしまう人は、この禁止令の影響を受けていると言えるだろう。

(8)「成功するな」

 うまくいったときには褒めてもらえない一方で、失敗したときは慰められたり、励まされたりする。そんな経験を繰り返すと発令されやすいのが「成功するな」の禁止令だ。
親が成功に関心を示さず、失敗したときだけ手をかけると、子どもは勝手に「成功してはいけない」というように思い込む
 また、「お前は肝心なところでダメだねえ」などとため息交じりに親が言う。すると、子どもは「自分は成功なんてできない人間なんだ」と思い込んでしまうのだ。
 会社を何度立ち上げても、なぜか倒産してしまうようなパターンに陥っている人は「成功するな」の禁止令に縛られているのかもしれない。

(9)「自分のことで欲しがるな」

 片親の家庭や、幼い頃に病気や怪我で親に経済的な負担をかけてしまったなど、自分のために苦労や我慢をし続けている親を見ていた人が持ちやすい禁止令だ。
 この禁止令を持つ人は、自分の欲求を素直に言えないだけでなく、幸運を人に譲り、幸せを自ら壊すような行動をとってしまう
 給料が少なく、生活が苦しいのに、それでも無理して恋人に貢いでしまう人や、友だちから「お金を貸して」と言われたときに断れない人などは、この禁止令の影響を受けている可能性大である。
 また、友だちに「実は、あの人のことが好きなの」と、自分と同じ人を好きだと告白されると友だちを応援してしまう人も、この禁止令を持っているのかもしれない。

(10)「健康であってはいけない」

 病気のときだけお菓子やジュースを好きなだけ食べさせてもらえた人や、親が体の弱い兄弟姉妹の面倒ばかり見ていた人に多い禁止令だ。
 この禁止令を持つと、病気や怪我で同情を引こうとしたり、突飛な行動やおかしな発言で周りの注目を集めようとしたりする。ちょっとした風邪や怪我でも、大げさに症状を訴える人は、この禁止令の影響を受けていると言えるだろう。
 また、暴飲暴食を繰り返し、会社の健康診断で要注意だと言われても生活習慣を改めない人も、「自分は健康であってはいけない」と思い込んでいる節がある。

(11)「重要な人になってはいけない」

 テストでいい点をとったときや先生に褒められたとき、子どもは親に喜んで報告するだろう。そんなときに「ふうん」と親の反応が薄いと、子どもは認めてもらえないことにショックを受ける。度重なると、「自分は重要であってはいけないんだ」とこの禁止令が発動されるのだ。
 この禁止令を持つ人は、常に目立たないよう心がけ、責任を負うのを嫌う。極端に地味なファッションを好んだり、口数も少なく、小さな声でボソボソ話したりする人は、この禁止令のせいかもしれない。
 また、部下やチームメイトとしては優秀だったのに、リーダーやキャプテンになった途端に実力が発揮できなくなる人はいないだろうか。
 そのような人も、この禁止令の影響を受けている線が濃厚である。人の上に立つ立場になると、「重要な人になってはいけない」と自分でストップをかけてしまうので、思うように力を出せなくなるのだ。

(12)「所属してはいけない」「仲間入りをしてはいけない」「孤独になれ」

 「あの子と口をきいてはいけません」と親が友達を選んだり、「この子は恥ずかしがり屋だから」と親が子どもの心を代弁してしまったりする例はあるだろう。そうなると、知らず知らずのうちに、子どもは同世代の子の中でもまれる機会が少なくなる。
 この禁止令を持つ人は、職場やグループに溶け込めず、一人で行動することが多くなる。サークルの合宿や社員旅行など、大勢の仲間と旅行に行っているのに、気がつくといつも一人で行動している人、飲み会や合コンに誘ってもいつも断る人は、この禁止令を持っている可能性がある。

(13)「存在するな」

 これはもっともつらい禁止令だろう。
 幼い頃に虐待を受けたり、「お前さえいなければ、私は離婚していたのに」などと親の不幸の原因にされたりした子どもは、この禁止令をつくってしまう。
自分は生きていてはいけないという思い込みから、自分の体や命を大事にできなくなる。アルコールや薬物などに依存してしまう人は、この禁止令の影響を受けているかもしれない。

 次回は、こうした禁止令が人生にどんな影響を与えているのかを見ていこう。

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鈴木敏昭 [心理学者]

◎1950年東京生まれ。教育学修士(京都大学/1980年)。
◎77年横浜国立大学教育学部卒業後、80年に京都大学大学院教育学研究科(修士課程)修了。85年に京都大学大学院教育学研究科(博士課程)単位取得満期退学。その後、四国女子大学家政学部助教授などを経て、96年より四国大学生活科学部教授。
◎専門分野は心理学。「自己意識の構造」が最大テーマ。その主な下位領域として自尊心、性意識、思い込み、人格形成などを研究。
◎中学2年のときから「自分とはなにか?」に関心があり、以来ずっと「自分」についての研究に没頭している。
◎日本心理学会、日本発達心理学会、教育心理学会、日本社会心理学会所属。著書に『自己意識心理学概説』(北樹出版)、『自己成立の発達心理学』(ふくろう出版)、『思い込みの心理学』(ナカニシヤ出版)などがある。


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