ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)

フランスに学ぶ地方自治議論
「大阪都構想」の議論は海外にもある(上)

――【続】無投票続出の地方選を救う教訓は 山縣有朋の「住民自治」にあり

松元 崇 [元内閣府事務次官/第一生命経済研究所特別顧問]
【第6回】 2015年6月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
日本の地方選挙の投票率が低い原因は、それが地方政治を左右し、さらに国政につながるという期待を、住民が持てないことにある。日本と比べて、欧州はどうなのだろうか

前回、わが国の地方選挙の投票率が低い問題を取り上げた際に、フランスでは投票率が高い(75%程度)ことをご紹介した。しかしながら、同じ欧州でも英国は低い投票率(35~40%程度)に悩んでいる。そこで今回は、そんなフランスと英国を比べた上で、わが国について振り返ってみることとしたい。

(注1)本稿の記述は、主として『地方自治』第653号、第797号-801号、及び、山下茂明治大学教授(元自治省)の『比較地方自治』1992.9、『体系比較地方自治』2010.10によっている。

フランスの高い投票率の
背景にあるもの

 フランスの地方選挙の投票率が高いのは、それが「地方政治を左右し」、さらには「国政にもつながる」実態を持っているからである。まず、「地方政治を左右し」という点は、フランスの地方選挙がもつ安定した執行部を成立させる独特の仕組みを基盤としている。たとえば、市町村(コミューン)の選挙では、各党の候補者名簿への投票が行われるが、多数派には必ず2分の1の議席が配分される仕組みがある(多数派プレミアム)。首長は、選挙後の市町村議会で互選されるが、そのようにして多数派となった党派の候補者名簿の筆頭者が選ばれる。

 そして、そのようにして選出された首長が議会の多数派の上に安定した執行部を組織して地方政治に当たるわけであるが、日本のような国による財源保証がないので、その執行部のやり方によっては、その地方の税金が毎年でも引き上げられることになる。そのような形で、地方政治が選挙によって左右される仕組みがビルトインされているのである。

 次に、「国政にもつながる」という点に関しては、地方自治の担い手と国政の担い手(政治家および官吏)の兼職が認められていることがある(注2)。国民議会議員の90%が地方議会議員を、45%がコミューンの首長職を兼任している。かつてのシラク元大統領は、同時にパリ市長であった。サルコジ前大統領も、大学在学中にパリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌ市の市会議員に最下位当選したことを振り出しに、1988年に国民議会議員、1993年に予算相などを歴任して、2007年に大統領になったのである。

(注2)我が国でも、戦前には地方自治体の首長が国会議員を兼職していた。たとえば、 安倍総理の祖父、安倍寛氏は昭和12年から山口県油谷町長と衆議院議員を兼務していた(『週刊新潮』2003. 10. 9])。なお、英国でも国会議員が地方議会議員を兼ねることができるが、その例は少ない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

松元 崇 [元内閣府事務次官/第一生命経済研究所特別顧問]

まつもと・たかし/株式会社第一生命経済研究所特別顧問、日本ボート協会理事。1952年生まれ。鹿児島県出身。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。1976年大蔵省(現財務省)入省。熊本県庁企画開発部長、大蔵省銀行局金融会社室長、主税局総務課主税企画官、財務省主計局次長などを経て内閣府に転じ、政策統括官(経済社会システム担当)、官房長、事務次官などを歴任。著書に『恐慌に立ち向かった男 高橋是清』(中公文庫)、『「持たざる国」への道-「あの戦争」と大日本帝国の破綻』 (中公文庫)、『高橋是清暗殺後の日本――「持たざる国」への道』(大蔵財務協会)、『山縣有朋の挫折――誰がための地方自治改革』( 日本経済新聞出版社)、『リスク・オン経済の衝撃』(日本経済新聞出版社)など。


歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)

日本はのるかそるか――。アベノミクスの信が問われるこの国は、まさに時代の岐路に立たされている。我々日本人は、政治、経済、社会の改革をどう見据え、新しい国づくりを考えて行けばいいのか。そのヒントは、近代日本を築き上げてきた先人たちの取り組みからも学び取ることができる。内閣府時代に新しい経済・社会システムづくりの知見を深め、歴史上のキーマンたちの姿を描いた著書を通じてわが国の課題を問い続ける著者が、「日本リバイバル」への提言を行う。

「歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)」

⇒バックナンバー一覧