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歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)

フランスに学ぶ地方自治議論
「大阪都構想」の議論は海外にもある(下)

――【続】無投票続出の地方選を救う教訓は 山縣有朋の「住民自治」にあり

松元 崇 [元内閣府事務次官/第一生命経済研究所特別顧問]
【第6回】 2015年6月10日
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>>(上)より続く

 しかしながら、このような委員会制に対しては、実質的な決定者が誰かがわかりにくく透明性に欠けるといった批判がなされるようになった(「英国の地方自治(概要版)-2011年改訂版-」)。

 そこで政府は、2000年に新たに地方自治法を定め、従来の委員会制に代えて、原則として、①市町村会から選出されたリーダーが内閣を組織して行政を担当するか(準議会内閣制)、②直接公選された首長が内閣を組織して行政を担当するか(直接公選内閣制、内閣は市町村会の議長によって組織される場合もある)を選択して導入することとした。結果は、①の準議会内閣制が299、②の直接公選内閣制が11、従来と同じ委員会制が42となった(2011年11月現在)。

 また、2000年には新たな地域主義法(Localism Bill)を制定して、それまで厳しく限定していた地方自治体の権限、及び所掌範囲を拡大する方向での見直しを図った。地方自治体が、経済的、社会的、環境的福利の追求のために必要と考えられるあらゆるサービスを、一定の制限の下で実施できることとしたのである。

 2010-11年地域主義法では、さらに自治体に対して法令で禁止されていないいかなる行動をも行うことができる権限を「付与」することができることとした。一連の改革は、条例の制定にもいちいち中央省庁の承認が必要だとしていたこれまでの考え方を、抜本的に変更するものであった。

 このような改革については、「これにより、今後地方自治体の役割が重要になり、中央政権によるトップダウン式統制であった国との関係について、大きく変わる可能性がある」とするものがあった(自治体国際化協会、2011年版『英国の地方自治』)。しかしながら、その後も、大きな変化は起こっていないようである。筆者としては、英国独特の地方財政面からの制約が変わらない限り、大きな変化は期待できないと考えている。

英国の地方自治は
効率重視が最優先

 どういうことかというと、地方自治体が業務範囲を広げようとすれば、それには財源が必要になる。しかしながら、英国は地方に十分な財源を与えない中で、地方自治体の効率性ばかりを重視してきた歴史を持っているからである。

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松元 崇 [元内閣府事務次官/第一生命経済研究所特別顧問]

まつもと・たかし/株式会社第一生命経済研究所特別顧問、日本ボート協会理事。1952年生まれ。鹿児島県出身。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。1976年大蔵省(現財務省)入省。熊本県庁企画開発部長、大蔵省銀行局金融会社室長、主税局総務課主税企画官、財務省主計局次長などを経て内閣府に転じ、政策統括官(経済社会システム担当)、官房長、事務次官などを歴任。著書に『恐慌に立ち向かった男 高橋是清』(中公文庫)、『「持たざる国」への道-「あの戦争」と大日本帝国の破綻』 (中公文庫)、『高橋是清暗殺後の日本――「持たざる国」への道』(大蔵財務協会)、『山縣有朋の挫折――誰がための地方自治改革』( 日本経済新聞出版社)、『リスク・オン経済の衝撃』(日本経済新聞出版社)など。


歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)

日本はのるかそるか――。アベノミクスの信が問われるこの国は、まさに時代の岐路に立たされている。我々日本人は、政治、経済、社会の改革をどう見据え、新しい国づくりを考えて行けばいいのか。そのヒントは、近代日本を築き上げてきた先人たちの取り組みからも学び取ることができる。内閣府時代に新しい経済・社会システムづくりの知見を深め、歴史上のキーマンたちの姿を描いた著書を通じてわが国の課題を問い続ける著者が、「日本リバイバル」への提言を行う。

「歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)」

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