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ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘

無料で良質なネットニュースが読める時代は終わる

奥村倫弘 [ワードリーフ 代表取締役社長]
【第3回】 2015年6月11日
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 ネットメディア、とりわけインターネット上のニュースを作る生産サイドは、情報の収益化に苦戦しています。そのため、前回お話ししたように「なんてことのない記事」を配信することで、新しい収益源を求めるという流れも出てきました。

 一方で、「価値ある記事は有料にすることで収益化できるのではないか」という希望も出てきています。もし、これが成功すると、何年か先に歴史を振り返ったとき「ユーザーが無料で良質なニュースを読めたのはここ20年間の、まれな時期だった」ということになるかもしれません。

ついに全国5紙が有料デジタル化

電車での新聞チェックも紙面ではなく、スマートフォン上でするのが当たり前になる日も近い?

 毎日新聞社が6月1日、電子新聞「デジタル毎日」を始めました。月額3200円の有料サービスです。これで、朝日新聞や日本経済新聞をはじめ全国5紙の有料版が出揃ったことになります。毎日新聞や朝日新聞、日本経済新聞では、「ネットである程度の記事本数は無料で読めるけれど、もっと読みたい場合は料金を支払ってください」という方式をとっています。これを「メーター制課金」と呼びます。

 日本経済新聞は、ウェブサイトを持っていますが、記事の見出しをクリックしてみると「この記事は会員限定です」と書かれていて、最後まで読むことができません。月10本まで無料で閲覧できますが、もっと読もうとすると有料プランに申し込まないといけません。朝日新聞も同じ仕組みを導入していて、1日3本までが無料、対価を支払うと何本でも読めるようになっています。

 「デジタル毎日」でおもしろいのは、速報や社説、コラム、写真などはメーター対象外としていることです。斜に構えた見方をすれば、速報はすでに世の中にありふれており、値が付かないコモディティー商品となってしまっているということでしょう。

初めて無料のネット記事を配信した
朝日新聞の功罪

 日本で初めてインターネットに新聞記事を無料で掲載したのは、朝日新聞が運営していたアサヒ・コムだと言われます。1995年のことでした。今でも、新聞業界の関係者に話を聞くと「『ニュースは無料で読めるもの』という意識を世間に根付かせたのはアサヒ・コム(現・朝日新聞デジタル)だった」と強烈な後悔と恨み節が聞こえてきます。

 もっとも、いまでも速報を配信するメディアがネットから一斉に記事を引き上げれば、悔しい過去を取り戻せるかもしれません。しかし、「どこかの社が裏切りかねない」(全国紙メディア担当者)という疑心暗鬼が支配しており、簡単に引き上げられない状態なのです。

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奥村倫弘[ワードリーフ 代表取締役社長]

1969年大阪府生まれ。'92年、読売新聞大阪本社入社。福井支局、奈良支局、大阪経済部を経て、'98年、ヤフー株式会社入社。R&D統括本部編集本部本部長を務め、2013年より、同年スタートしたニュースサイト「THE PAGE」の運営会社であるワードリーフ株式会社の代表取締役社長を務める。


ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘

インターネットの発達とスマートフォンの普及で、私たちのニュースとの接し方は大きく変わりました。しかし、今あなたの見ている記事は本当に価値がある情報と言えるのでしょうか?この連載では、元ヤフートピックス長を務め、現在ではニュースサイト「THR PAGE」の運営を行うワードリーフ代表・奥村倫弘さんが、ネットジャーナリズムの光と影を解説します。

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