4月下旬以降、上昇傾向を続けていたドイツ10年債利回りは、5月中旬に0.8%を目前に低下に転じ、一時0.5%を割り込むなど、低下傾向に回帰するかに見えた。ところが、6月に入って再度利回りは急上昇し、1%近くに到達してしまった。

 利回り急騰のきっかけの一つとなったのが、2日に発表された消費者物価指数。市場予想を上回る上昇幅となり、ユーロ圏におけるデフレ懸念の後退とECB(欧州中央銀行)の国債買い入れ政策の早期終了への思惑を高めた。

 いわゆる「フィッシャーの方程式」によれば、長期金利は実質金利(期待潜在成長率)と期待インフレ率の和に等しいが(長期金利の場合はこれにリスクプレミアムを加えるべきであろうが)、2014年以降のドイツ10年債利回りについて調べてみると、ユーロ圏の潜在成長率(欧州委員会が発表)と消費者物価指数(前年比)の和ときれいに連動するような格好で低下している。今回は、この和が上昇するのに合わせて10年債利回りが上昇した。ECBがインフレに非常に敏感であり、過去の金融政策がインフレ動向に大きく左右されたという歴史を考えれば、インフレ率の上振れに合わせてドイツ長期金利が上昇したことも理解できるだろう。