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田中均の「世界を見る眼」

膨張する「中国の夢」に日本はどう向き合うか

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第45回】 2015年6月17日
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「一つの世界」と「二つの世界」
中国国内にある路線対立

覇権を目指す中国はどこに向かうのか。日本はその中国と共存できるのか

 東アジア地域で日本は中国と共存していかなければならない。覇権を求めていくような中国は困る。国内が混乱した中国も地域の安定を著しく損なうだろう。国際社会と協調していく中国が好ましい。

 しかし、昨今の中国の行動を見ると、多くの疑問符が付く。急速に台頭してきた今日、どのような対外関係を営んでいくのが良いのか、何が現実的なのか、中国自身が判っているとも思えない。

 習近平総書記が掲げるのは「中国の夢」という概念である。多分、「中国の夢」は世界のGDPの3割を占め、栄華を極めた19世紀以前の中国に戻りたいということなのだろう。アヘン戦争、日清戦争での敗北から始まった屈辱を晴らし、失った権益を取り返したいということなのだろうか。

 「中国の夢」は、2010年に日本をGDPで追い越し自信をつけた中国にとって、鄧小平の「力をためるまで低姿勢で」という教えに変わる概念として登場しているかのようである。ただ、中国の国内でも「中国の夢」をどのような方法で実現するのかについては路線の対立があるように見受けられる。

 一方では、中国が高い経済成長を実現し、急速に台頭し得たのは、WTOに代表される国際貿易体制など西側先進国が作ったシステムに依拠したからであり、これを離れて中国の一層の発展は望めず、中国は引き続き国際社会の中で諸国と協調しつつ影響力を増していくべきという、いわゆる「一つの世界」観がある。

 他方、米国を中心とする西側先進国の既得権益を壊すことは可能ではなく、従って中国独自の価値観に基づく世界を構築しようとする「二つの世界」論も頭をもたげている。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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