昨年、人間ドック学会などが発表した高血圧の「新基準」が大騒動を巻き起こした。『ダイヤモンドQ』編集部では、その理由や背景を解説する。

どこまでが正常?
基準値めぐり一騒動

 どこまでが正常で、どこから高血圧? 昨年4月、高血圧の基準値をめぐり一騒動が持ち上がった。

結局、治療すべきか否か <br />高血圧の新基準値騒動の顛末これまで高血圧の薬を飲んでいた人も、異常なしの範囲に入ってしまう

 きっかけは、人間ドック学会と健康保険組合連合会が合同でつくる「検査基準値及び有用性に関する調査研究小委員会」が発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」という報告書。

 血圧やコレステロールなど、おなじみの基準値を大幅に緩めたものだから、さぁ大変。分かりやすい血圧を例にすると、違いは歴然で、これまでおとなしく血圧を下げる薬を飲んでいた人も、異常なしの範囲に入る(表参照)。「いままでは何?」という気持ちにもなる。

 しかし、「新基準」が公表されたわずか10日後の4月14日には、日本高血圧学会(JSH)が「高血圧の判定基準は140/90mmHg以上で変更ありません」との見解を発表。5月21日には日本医師会と日本医学会が共同見解を出している。

 特に後者は手厳しく、小委員会の報告を「拙速」「エビデンス(科学的根拠)が高いとは言えない」と批判。「医療費適正化自体を目的とした基準範囲の設定であれば、本末転倒と言わざるを得ない」と断じた。