レジナルド・レバンス(1907年生まれ)は、長く多様なキャリアを通してずっと教育問題に携わっている。彼は1960年代から70年代に隆盛であった「チョークとトークの」伝統的なマネジメント教育を容赦なく批判し、人がいちばん効果的に学ぶのは本や講義や教師からではなく、現実の問題を他者と共有することからであると説いている。
人生と業績
レバンス(1907年生まれ)はケンブリッジで学び、在学中の1928年、走り幅跳びでオリンピックのイギリス代表となった(1929年から1962年まで学生記録保持者であった)。学位を取得した後、レバンスはエマニュエルカレッジの研究員となり、1935年にはエセックス州の教育長に任命された。第二次世界大戦の終わり頃、彼は鉱山組合(後の英国石炭委員会)の教育部長になるが、1950年には石炭産業のマネジメントを研究するために学究生活に戻った。1950年代の半ば以降は、産業経営やマネジメントの分野でさまざまな職位を歴任している。ソルフォード大学内に設立されたアクションラーニング研究センターにも関与している。
思想のポイント
●アクションラーニングのプロセス
レバンスはイギリス石炭委員会の教育部長を務めているとき、炭鉱労働者が抱えている問題を、単に想像するのではなく実際に見て突きとめようと、2年間彼らと生活を共にして働いた。彼はこの経験により、人が最も効果的に学ぶのはグループで何かを「する」ことによってであると気づき、それが「アクションラーニング」を支える理論の開発につながった。
アクションラーニングのプロセスは以下のように表わすことができる。
・学習(Learning)=プログラムされた知識(Programmed knowledge)+「洞察力を伴う」質問('insightful' Questions)をする能力、すなわちL=P+Qである。
・プログラムされた知識(P)は、本や講義やその他の系統だった学習を通じて伝達される。知識を得るためには便利だが、本当に必要なものを見つけるのには時間がかかることもあるし、これだけではすべての学習ニーズを満たすのには不十分である。レバンスは、この知識獲得がマネジメント学習において重きを置かれすぎていると主張している。
・洞察力を伴う質問(Q)は、適切なタイミングでなされる質問で、進行中のプロジェクトでの経験や取り組みを元に、単なる出来合いの解決法を受け入れるのではない、創造力に根づいた質問のことである。レバンスは、Pは専門家の領域であるが、Qは答えを見つけてプロジェクトを前進させるリーダーの領域であるとしている。レバンスはまた、Pは馬鹿げた話(poppycock)、決まり文句(platitude)、教授先生(professor)の頭文字だが、Qは質問(query)やクイズ(quiz)の頭文字であるとも述べている。
洞察力を伴う質問は、レバンスの学習プロセスの中心である。自分がやっていることを沈思熟考しなければ、Pから得られることはあまりない。レバンスは、単に「する」だけではなく、することから学ぶこと、すなわちQを身につけることが重要だと論じている。