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真山仁の時代を読む
【第9回】 2015年7月22日
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真山仁

最新刊『ハゲタカ外伝 スパイラル』から考える
日本の企業とものづくりが変わる“遊び”の作り方
新刊発売記念対談【後編】 朝倉祐介さん×真山仁さん

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シリーズ最新作『ハゲタカ外伝 スパイラル』を上梓した真山仁さんと、1年でミクシィの経営再建を果たした事業家・朝倉祐介さんとの対談はさらに白熱。後編では、日本の製造業の弱みになっているおかしなこだわりや、新規事業を成功させるコツ、経営再建を進めるうえで不可欠な3要素などに話がおよび、新作のテーマともあいまって議論が深まっていきます。

「まずは」日本で成功してから−−
という発想は段階的な改善しか生まない

真山 ものづくりに“ソフト”的な発想を持ち込む、という点をはじめ、今の日本企業はものづくりの現代化ができていませんね。

朝倉 日本では、組織も発想もソフトウェアとハードウェアできっぱり分かれてしまっていますが、本当は互いが混ざり合っている部分こそ面白いと思うんですよ。スペースXのイーロン・マスクCEOは、まさにハードウェアの世界にソフトウェアの発想を持ち込んだわけですよね。ハード面、つまり技術を突き詰めるうえでは今なお日本の製造業に優位性があるでしょうが、価値観を感じてもらえない方向に突き詰めてもただの嗜好品になってしまうから注意が必要です。一方でソフトウェアやネットサービス関連は、残念ながら日本企業に国際競争力はほとんどありません。

真山 なぜそうなったと思いますか。

朝倉祐介さんプロフィル/1982年兵庫県西宮市生まれ。中学卒業後、オーストラリアの競馬騎手養成学校に入学。帰国後、北海道で競走馬の調教助手を務めた後、東京大学法学部に入学。2007年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。国内外の大手企業、公的機関の戦略立案、オペレーション改善プロジェクトなどに従事。その後、自身が学生時代に立ち上げたネイキッドテクノロジーの代表取締役社長兼CEOに就任。11年、同社をミクシィに売却したことを機にミクシィ入社。事業開発などを担当し、13年より代表取締役社長、同社の業績回復を機に退任。現在、米スタンフォード大学客員研究員。

朝倉 ひとつは、海外と比べてソフトやウェブを手がける企業規模が小さすぎて、もはや投資規模など比較にならない。もうひとつは、日本企業に最適化のマインドが染みつきすぎてしまっている影響もあると思います。法人向けのソフトであっても、細かく専用の仕様に作り込むばかりで、米国のようにパッケージ化した製品を大々的に販売するビジネスはとことん苦手です。細かく作り込んでいる限り、いつまで経ってもビジネスは成長しません。

真山 最適化という行動様式が日本の製造業に染みついてしまったのはなぜだと思いますか?

朝倉 日本市場にどっぷり依存しているからでしょうね。韓国や台湾のように自国市場が小さければ外で勝負するしかありません。でも日本は今でもまだGDP世界3位とネットサービス産業も十分大きいから、一義的にはまずそちらを向いてしまうでしょう。

 それに、ベンチャー企業の資金調達にも日米で大きな差がありますね。日立製作所のような大手一社が1年に費やす研究開発費が約3000億円(2014年度で3348億円、売上高比3.4%)にのぼるのに対し、日本でのベンチャーキャピタルから未公開企業への年間投資総額は1000億円程度にすぎないんです。米国では1社に対し50億円、100億円という単位で投資されるのに比べると大きな差です。社内に抱えられるエンジニアの数も、日米でケタが違いますから。

真山 日本企業も長らく輸出で成長を遂げてきた自動車のように従来型のビジネスで世界に展開し続けている例外を除けば、朝倉さんが指摘するとおり国内市場に依存しているうちに海外に出遅れてしまう例が目立ちますね。

 その最たるものが携帯電話のガラケー(ガラパゴス携帯の略で、日本国内の独自仕様で異様に進化して海外市場から取り残された様を揶揄する呼び名)で、当初は「とりあえず日本国内で売ってみよう。うまくいったら海外でも売ってみよう」と思っていたのだろうけど、それだと通用しない。世界に通用する企業が増えるためには、このままではいけないという自覚を、トップにいる人たちはもっているのでしょうか。

朝倉 それは誰しも思っているんじゃないですか。でも、まずは日本市場で受け入れられるものを作ろうという発想だと、どうしても段階的な改善になりがちですよね。あるいは、ひたすらスペック競争に走る羽目に陥るでしょう。しっかり収益を稼ぐ基盤を確立する一方で、面白いアイデアを形にする、すなわちそのための失敗も許容するだけの“遊び”が必要ではないでしょうか。

真山 その点に関して今は米国が非常に強いと感じます。もともと米国人は“遊び”と“仕事”をミックスさせるのがうまい。かつてのソニーもそういう素養をもつ数少ない日本企業で、そうやってウォークマンも生み出されたわけだけど、最近はそういう“遊び”が見られなくなった。ソニーに限らず、日本企業は妙にお行儀よくなってしまった印象です。

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真山仁 

まやま・じん。小説家。1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収をめぐる熱き人間ドラマ『ハゲタカ』でデビュー。2007年に『ハゲタカ』『ハゲタカ2(『バイアウト』改題)』を原作とするNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』が放映され、大きな反響を呼ぶ。同ドラマは国内外で多数の賞を受賞した。また、地熱発電をテーマにした『マグマ』も、2012年にWOWOWでドラマ化された。その他の著書に、日本の食と農業に斬り込んだ『黙示』、中国での原発建設を描いた『ベイジン』、短篇集『プライド』、3.11後の政治を舞台にした『コラプティオ』、「ハゲタカ」シリーズ第4弾となる『グリード』、『そして、星の輝く夜がくる』などがある。10/30に最新刊『売国』(文藝春秋)を刊行予定。2014年でデビュー10周年を迎えた。

 


真山仁の時代を読む

2004年に外資系バイアウト・ファンドの内実を描く『ハゲタカ』で鮮烈なデビューを飾って以来、日本の「今」を見つめながら数々の問題作を世に送り出してきた作家の真山仁さん。2014〜2015年は新刊作品や新連載も目白押しであり、本連載ではデビュー10周年を記念して、様々なインタビューや講演録など、真山さんの作品に込めた思いや作品作りの裏側をご紹介していきます。

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