人類最初の「狩猟方法」とは?
本連載の第112講『「教えない」究極の教育法』では、「狩猟採集民における教示の不在」を紹介しました。現代における狩猟採集民(ピグミー族など)を観察すると、年長者から若者に一方的にものごとを教えることがほとんどなく、「やって見せるだけ」だというのです。そうでないと、自ら創意工夫することを覚えないから。
「足が長すぎるサル」として160万年前、アフリカで生まれた人類(原人)は、幾度かの生物学的進化と「出アフリカ」を何度か果たし、世界に拡がっていきました。農耕が始まったのは約1万年前。それまではずっと狩猟採集民でした。
ではここで問題です。「人類最初の狩りの方法は?」
1. こん棒、2. 投石、3. 槍、4. 弓矢、5. 手斧、6. 罠(落とし穴など)、7. その他
場所はアフリカのサバンナ。猛獣がウジャウジャいるところで、人類は、どう自分たちよりずっと足の速い獲物を、仕留めていたのでしょうか?
答えは「汗」??
答えは、7. その他、です。
人類が最初に使った道具が木の棒なのか石器なのかはわかりませんが、いずれにせよそれらは獲物を仕留めた後に使われたもの。肉を骨から引きはがし、分断するためのものでした。手斧もそうです。
28万年前ほどになってから、ようやく尖頭器(先の尖った石器)がつくられるようになり、槍などの武器が出現しました。
それまでの130万年、どう狩りをしていたのでしょう? 罠なのかもしれません。しかし、それも現代の狩猟採集民(ブッシュマンなど)の研究により、ひとつの答えが示されています。
それが「走って追いかける」です。そしてそれでの狩りを可能にしたのが、われわれの生物学的進化である「汗をいっぱいかける」ことでした。