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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

安倍政権に欠けている“サイバー安全保障”

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第22回】 2015年7月23日
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 政府の成長戦略は、第4次産業革命に乗り遅れるなという。しかし、その前に必要なのは、新しい情報技術の時代において、われわれの生活と経済活動の安全を確保することだ。安保関連法案をめぐる議論には、この視点がまったくない。

第4次産業革命で
本当に必要なことは何か?

 6月30日に発表された政府の「日本再興戦略」(成長戦略)は、これからの日本の成長を支えるものとして、「第4次産業革命」と言われるIoTや人工知能の活用を挙げた。その基本認識は正しいが、問題は「何をするか」だ。

 同戦略は、これらの技術を開発するため、大学改革を進め、またベンチャー企業を促進するという。

 「これらの技術は、大学やベンチャー企業によって開発されたものだから、日本でも同じようにしよう」ということなのだろうが、その発想は幼稚すぎる。

 政府の成長戦略というのは、各官庁が進めたい事業の予算を獲得するための手段だから、「いま流行りのトピックを神輿にして予算を取る」ということになるのは、やむをえない。しかし、問題は非常に重要なので、もっと真剣に考えるべきだ。

 私は、こうした部門での先端的技術開発を日本で行なうのは、無理だと思う。もちろん、できればそれに越したことはないが、大学改革一つをとってみても、気が遠くなるような話だ。百年河清を俟つよりは、すでに開発された技術を用いることができる社会の構築を、まず目指すべきだ。

 それですら、容易ならざる課題だ。つぎの2つのことが必要だからである。

 第1は、新しい技術を受け入れられるよう規制の緩和を進めることだ。これについてはすでに週刊ダイヤモンド連載、「超」整理日誌(第767号、2015年7月25日号)で述べた。

 第2は、社会の安全性確保である。新しい技術には、よい面もあるが危険な面もある。われわれの生活を豊かにしてくれる可能性がある半面で、安全性を損なうおそれもある。よい面を利用する一方で、危険な面に備える必要がある。再興戦略は「政府機関等のサイバーセキュリティを抜本的に強化する」としているが、この程度のことで十分とは思えない。以下では、この問題を論じることとする。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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