建設業界における
IoTのパイオニアを目指す

東急建設の高倉望・土木本部環境技術部担当課長 Photo:DIAMOND IT Business

 建設業界中堅の東急建設は、建設現場におけるIoT(Internet of Things)の実証試験を7月から開始した。

 建設現場では今、オペレーター(建設機器の操作者)を含め作業員の人手不足・高齢化対策、安全性の向上、環境への配慮、さらには国の成長戦略に沿ったICTの活用など、いくつもの課題が存在する。

 こうした課題を踏まえ、同社では、建設現場の様々なデータを、会社にとって役に立つ情報に変換するIoTの流れを先取りし、建設業界におけるIoT利用のパイオニアを目指そうとしている。

「IoTによって現場の仕事を変えるだけでしたら、やろうと思えばはすぐにできます。しかしそれを続けていくには、なによりも『明確な目的』が重要になります。今回の取り組みの場合は、当社のCSRレポート用により正確なCO2排出量を計測するという目的を設定しました。そこで手始めとして、建設現場の重機にモニタリングセンサーをつけ、正確な稼働時間を記録することから始めることにしました」(髙倉望・東急建設土木本部環境技術部担当課長)

CO2排出量の管理が自動化

 これまでCO2排出量は、現場の管理者が「重機Aは5時間、重機Bは2時間…」といったように、おおよその稼働時間を記録し、その時間に一定の係数を掛けて算出していた。重機の稼働時間が正確にわかれば、CO2排出量もより正しく算出できるようになるわけだ。

 このモニタリングシステムは、今回の実証試験用に汎用のセンサーを組み合わせて独自に開発したもので、特定メーカーの重機だけでなく、現場でリースしたどのメーカーの重機にも取り付けられるのが特徴だ。

 今回のIoTのシステムは、センサー取り付けなどのノウハウを持つ開発パートナー会社と組んだセールスフォース・ドットコムの提案を採用した。重視したのは開発スピードだ。実際、導入決定から正味1ヵ月強でテストを開始できたという。

 実証試験は、セールスフォース・ドットコムのクラウドプラットフォーム「Salesforce1」を活用し、関東近郊のある建設現場でスタートした。現在は、センサーを設置した5台の重機の日々の稼働時間と位置情報、CO2排出量のデータを蓄積中だ。渋谷の本社にいながら、関東近郊の現場で働く重機の状況が、タブレット画面で手に取るようにわかる。

タブレット端末からアプリを起動すると、建設現場の地図上に各重機の稼働状況がピンで表示される(画像提供:東急建設)