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医療・介護 大転換

8月から制度改定で負担増の直撃弾を受ける介護保険利用者とは?

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第36回】 2015年8月5日
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 介護保険の利用者の中で、この8月から負担が増える人が出て来る。一定以上の所得や資産があると、現在使っている在宅サービスや施設利用料が引き上げられる。軽度者については、すでに4月から訪問介護と通所介護(デイサービス)で国から自治体に制度の仕組みが移行しつつある。さらに、急速に浸透しているサービス付き高齢者住宅(サ高住)の入居者が使う在宅サービスについても、「過剰利用」があるとの判断でケアマネジャーへの締め付けを強化していく。

介護保険の財源問題は深刻

 こうした一連のサービス縮小への動きは、長期的な社会保障費の伸び率を抑えて行こうとする財務省を中心にした現政権の姿勢が表れたものと言えるだろう。消費税を10%に上げられなかった影響も大きい。

 欧州諸国並みの介護サービスを求めるならば、消費税の15%アップを視野に入れた議論が必要だろう。福祉先進国と言われる北欧諸国の消費税は25%であり、オランダや英国も約20%。日本だけが異常に低いレベルに止まっている。

 大都市部でなお一段と深まる少子高齢化を目前に、社会保障費の財源確保の議論が必要だろう。

年金収入年280万円以上は
1割負担から2割負担へ

 8月からの制度改定で直撃弾を受けるのは、年金収入が年280万円以上の要介護高齢者である。介護保険の利用料が費用の1割から2割に倍増するからだ。2000年4月に始まった介護保険制度は、年齢や収入、家族構成などに関係なく誰でも1割負担という分かりやすい仕組みだった。それが、収入によって利用額が変わることになり、発足以来の大変更となった。

 要介護3の高齢者でデイサービスや訪問介護などを利用している人の全国平均の自己負担額は約1万6000円だった。これが3万2000円に膨らむ。

 夫婦で年金収入が異なり、例えば夫が280万円で妻が120万円の場合は、夫だけが2割負担で、妻は現状の1割負担となる。だが、合計収入が同じ400万円でも、共に200万円ずつなら2人とも1割負担で済む。

 介護保険制度は、家族単位でなく個人単位であるからだ。例外的に、夫婦のどちらかの年金が280万円以上あっても、夫婦の年金額の合計が346万円未満なら2人とも1割負担のままでいい。

 すでに、介護保険の保険者である市区町村から7月末までに全国の要介護認定者へ「介護保険負担割合証」が届いており、2割負担になるかどうかが知らされている。住民税を算定する所得データを活用して、自治体が判定したものだ。実際には、8月分の利用料を支払う9月になって、その事実に驚く人が出てきそうだ。

 2割負担になる人はどのくらいか。厚労省は、在宅サービスの利用者で約15%、特別養護老人ホーム(特養)の入居者で約5%とみている。合わせて約50万人に影響する。

 市区町村からの「割合証」は、毎年送られてくる。収入が上下する人はその都度確認するといいだろう。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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