今、甲子園では16歳のスラッガー・清宮幸太郎(早実高・1年)に注目が集まっているが、22日から始まる北京世界陸上では、もうひとりの16歳に熱い視線が注がれるはずだ。東京・城西大学付属城西高校2年の短距離ランナー、サニブラウン・アブデル・ハキームである。
サニブラウンは昨年の長崎国体100mの少年B(中3・高1が対象)で優勝、また今年6月の日本選手権では100m、200mとも2位に入って陸上関係者からは注目されていたが、世間にその名が知れ渡ったのは7月にコロンビアで行われた世界ユース陸上競技選手権の100m、200mの二冠を達成した時だ。
U・ボルト超えの衝撃!
サニブラウン選手の“伸びしろ”
18歳未満を対象にした大会とはいえ、アメリカ、南アフリカ、キューバなどの精鋭を相手に優勝したことが、まずすごい。そしてさらに驚きを与えたのが、この時出したタイムだ。向かい風0.4mにもかかわらず、100mは10秒28、200mは20秒34。これはいずれも大会新記録であり、とくに200mの20秒34は現・世界最速男ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が同じ16歳の時にこの大会で記録した20秒40を0.6秒上まわった。このニュースは国際陸上競技連盟(IAAF)がオフィシャルサイトで大きく取り上げたように世界の陸上関係者に衝撃を与える快挙だった。
サニブラウンはガーナ人の父と日本人の母を持つハーフである。幼少期はサッカーをやっていたが、ハードルの選手だった母の勧めで小学校3年から陸上競技を始めた。中高一貫校の城西中学に進学後は陸上部で活動したが、身長も160センチ台で目立った成績は残していない。が、中学3年になった頃から身長がグングン伸び始め、現在は187センチ、74キロという堂々たる体格。今も身長は伸び続けているそうだ。
体ができるとともにタイムも急激に伸び、一気に同年代では世界のトップ、日本国内でもトップクラスのスプリンターに成長した。同校でサニブラウンの指導をしているのは、2000年シドニー五輪の400m代表の山村貴彦コーチ。山村コーチは「選手を追い込まず、伸び伸びとやらせて成長を見守る」のが指導方針だそうで、サニブラウンに対してもフォームの指導などはあまりしていないという。
実際、世界ユース選手権映像を見ても、他の選手は短距離走者らしい洗練されたフォームで走っているのに対し、サニブラウンの走りはがむしゃらというか、本能任せというか、フォームは完成されておらず粗削りだ。それでも勝ってしまうのだから、並外れた身体能力があるのだろう。