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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

「大学に文系は要らない」は本当か?
下村大臣通達に対する誤解を解く(下)

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
2015年8月17日
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>>(上)より続く

 だからこそ、18歳人口減少やグローバル化、社会の成熟化を見越して、国立には国立にしかできない分野、強み、特色を元にして、教育・研究の強化をしてほしい、というのがもう1つの方向性なのです。つまり、我が国の文系については、ひきつづき、学部教育の中心は私立が担い、国立大学文系においては私立が担いづらい分野、たとえば、教育の高度化、修士博士課程の充実、研究力の飛躍的増進といったところにもっと特化して、国立・公立・私立が、その役割分担を明確にし、その上で、有機的連携を強化するというのが筋だと思いますし、通知はそうしたことを言っているのです。

 たとえば、教育などでも、発達障害に関する研究や、発達障害をはじめとする特別支援教育を行える人材の育成など、国立大学に期待される分野はいくつもあります。

 さらに言えば、国立大学の文系においてなかなか組織改革が進まない中、実は私立大学においては、通知が指摘しているところの「18歳人口の減少や人材需要等を踏まえた組織見直しを計画し、社会的要請の高い分野への積極的な対応」がかなり進み、様々な文系学部の再定義・再編が行われています。もちろん、そのなかには、奇を衒いすぎて、少し首をかしげるものもありますが、しかし私立大学が社会の動向、学生の志向を踏まえながら、大学の文系教育が担うべき分野や内容について不断の見直しを続けていることは事実です。

 これまでの私立大学の文系教育研究において果たしてきた役割と実績について、学術会議声明は全く眼中にないかのごとく、国立大学における文系組織の積極的見直しをなぜ文系全体の軽視に直結させて論じてしまうのか、理解できません。官尊民卑的思考枠組みが学術界にあるのかと疑ってみたくもなります。

そもそも文系学部の見直しは
「既定路線」だった

 おそらく、マスコミが「廃止」という文言に敏感に反応したことはやむを得ないことだと思います。

 この点は、以下のような事実を踏まえて表現すべきだとの反省は文部科学省にはありますが、しかし学術会議は声明文を作成する前に、基本的な事実や背景は確認しておくべきでしょう。文部科学省に聞いてくれれば済む話なのですから。現に、賢明な人文社会系の学者の何名かが、私のところに事実確認に来られて、よく理解されて帰られました。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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