スイス腕時計協会によると、6月のスイスからの国別輸出額は、中国(本土+香港)向けが世界一だった。しかし、前年比はマイナス18%の大幅減少を示した。一方で、英国は34%、イタリアは25%、フランスは24%の大きな伸びを記録した。スイス製時計への中国人の需要が急落して、欧州人の需要が高まったかのように見える。
しかし、業界関係者によると一概にそうとも言い切れず、中国人観光客が海外で購入するケースが増えているのだという。それに対応して、スイスの時計メーカーは欧州の店舗で中国語が話せる店員を増員中だ。このため、スイス時計業界は上海株価指数の6月以降の急落が、中国人の消費マインドを悪化させないか気をもんでいる。
中国人の今後の消費動向を心配しているのは日本も同様といえる。しかしながら、今のところ東京や大阪では、相変わらず中国人観光客は「爆買い」を続けている。
7月最終週に大阪の道頓堀近辺を歩いたが、中国人を中心とする観光客でごった返していた。団体客がドラッグストアに入っていくのが見えたので、付いていってみた。彼らは胃腸薬、頭痛薬、目薬、ビタミン剤、化粧品などあらゆる商品を大量に購入していく。
スマートフォンの画面を見ながら、ブログで推奨されている商品をチェックしつつ選んでいる人が多かった。スカイプなどのテレビ電話で商品をカメラに写し、自国にいる家族に「これでいい?」と聞きながらカゴに入れる人もいた。買い物を終えた人は、大量の購入品を入れた大きなビニール袋を持って店から出てくる。
心斎橋近くのビジネスホテルに宿泊したのだが、翌朝食堂に行くと日本人のビジネスパーソンは1割程度しかおらず、大半の宿泊客が中国語を話していた。寝ぼけていたせいもあり、「あれ、今日は中国出張だっけ?」と一瞬混乱するほどの中国人の多さだった。
では、中国本土の消費者の様子はどうなっているのだろうか。北京や上海にいる知人のエコノミストに尋ねてみたが、意外に悲愴感が漂う話はあまり聞こえてこない。株で損失を発生させた人は多いが、あっけらかんとしている人が今は多いという。なぜなのだろうか。