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「日本」を考える~私たちはどこへ向かうべきか

安保法制と安倍談話で考える、
日本は「あの戦争」から学んでいるか?(下)

政治ジャーナリスト・松井雅博

松井雅博 [政治ジャーナリスト]
【第11回】 2015年8月18日
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>>(上)より続く

 さらに、万一中国を仮想敵国と考える人が政府関係者にいるとすれば、今の中国と戦争して勝てるという発想自体がナンセンスである。今の中国は、もはや列強に敗れた清でもなく、革命で混乱した中華民国でもない。世界第2位のGDPと13億人の人口を抱える大国である。しかも毎年軍事予算を増やし続け、まともにつきあっていたら大変なことになる。この国に勝つ防衛力を確保するためには、いったいどれだけ国民生活を犠牲にしなくてはいけないだろう。いったい、いくら防衛費を増やせば、中国や北朝鮮と正面から戦える軍事力を持つことができるのだろう。

 逆に考えて、「核」を持っている中国や北朝鮮に我々が怯えるあまり、条約交渉などで遅れをとっているか、と言えばどうだろう。単に英語や交渉が苦手だったり、成熟社会が故に成長が鈍化していたり、財政難やイノベーションを評価しない風潮などによって交渉の劣位に立つことはあるだろうが、それは単に外交下手なだけで、防衛力の影響は限定的なはずだ。

 日本が国を守るためには、国連を中心とした国際秩序を遵守し、多国間の協調的枠組みをベースとした国際秩序を積極的に支え、活用するための外交努力をするのがベストと考える。多様な国と貿易関係を確保することで物流ルートを多角化させ、世界との接点を増やして「貧困と孤立」に陥らないようにする。

 「自分の国だけが豊かならよい」という考えは捨て、環境問題や難民問題、疾病対策などの医療支援、押し付けにならない程度の途上国の民主化や教育支援など、世界の平和と安定に資する活動に国民の総意でコミットする。

 優秀な若者に力を発揮してもらうために、日本の枠に閉じ込めず世界で活躍してもらう。交換留学もどんどん増やし、ビジネスパーソンや投資の交流も盛んにすべきだ。互いの文化を理解し、多様性を尊重する風潮を醸成することが大切だ。

 爆弾や軍艦といったハードパワーは一見勇ましく、ソフトパワーは一見頼りないかもしれない。しかし、武力に偏っても抑止力は上がらず、ソフトパワーを強めることのほうが国を守る抑止力としては心強いのが、現実だと思う。

集団的自衛権賛成派と憲法9条擁護派
「平和ボケ」は果たしてどちらか?

 武力ではなくソフトパワーによる安全保障という主張には、「平和ボケ」という批判が起きそうだ。筆者も別に、武力保持を全面否定しているわけではない。

 筆者がとある「右寄り」の政治家と安保政策について議論した際、「本当に国際連合が頼りになるのか」と問い詰められたことがある。売り言葉に買い言葉的になるが、曲がりなりにも戦後70年間国際秩序を見守ってきた実績のある国連をはじめとする国際間の協調を尊重せず、米国との集団的自衛権を尊重する、というのには違和感がある。

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松井雅博[政治ジャーナリスト]

まつい・まさひろ/1979年6月14日生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。工学・教育学の2つの修士号を持つ。国家公務員1種法律職試験合格(政策秘書資格取得)。国連英検A級。マッキンゼーアンドカンパニーなどグローバル企業での勤務を経て、国会議員政策担当秘書として政界へ飛び込む。35歳の若さで、第47回衆議院議員選挙に兵庫10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)より出馬し、5万1316票を獲得するも落選。一民間人の感覚で政治の現場や裏側を見た経験を活かし、これまでブラックボックスだった政治の世界をできる限りわかりやすく面白く伝えることに情熱を燃やす。


「日本」を考える~私たちはどこへ向かうべきか

異例の延長国会で審議が続けられる安保法制、日中・日韓関係の緊張が続くなかで予定される安倍首相の「戦後70年談話」をはじめ、戦後長らく続いてきた日本の国家体制や国のポリシーを問い直そうとする動きが、足もとで出始めている。戦後70年を迎えた今、我々日本人が改めて日本という国の「形」を問い直すべき時期に差しかかっている。これまでの歴史的教訓も踏まえながら、日本はこれからどんな道を歩んでいくべきだろうか。様々な分野の識者が、独自の視点から「持ち続けるべき日本観」「新しい日本観」について提言する。読者諸氏も、ともに「日本」を考えてほしい。

「「日本」を考える~私たちはどこへ向かうべきか」

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