東京ウォーカーを上回る
台湾「Japan Walker」の発行部数
訪日外国人数の増加が加速している。日本政府観光局(JNTO)によると、2015年1—7月の累計人数は1105万8300人。前年同期比で46.9%も増加した。政府は東京五輪の開催される20年に年間2000万人を目標としているが、早ければ今年にも達成できそうな勢いだ。
東京や大阪など大都市では、中国人観光客がドラッグストアや家電量販店、百貨店などに大挙して訪れる「爆買い」は、日常風景の一部となった。しかし、言葉の壁もあるためか、店舗情報や交通機関情報をもっと簡単に入手したいという声は多い。一方、迎え入れる日本側も、「外国人のお客さんにもっと来てもらえるようにするために、どうしたらいいか」と、多くの企業や店舗が知恵を絞っている。
そんな中、情報誌や美容誌など、雑誌のプロたちが外国人観光客向けの情報発信に力を入れはじめている。たとえば、「東京ウォーカー」をはじめ、数多くの地域情報誌を手がけてきたKADOKAWAは、このウォーカーで培ったノウハウを元に、インバウンド戦略に乗り出している。
元々、台湾や中国本土に現地企業との合弁というかたちで進出していた同社は、「台北ウォーカー」(月刊)など現地情報誌も出版してきた。これまで、「台北ウォーカー」の中にブックインブックという形で入れていたのが「Japan Walker」。今年8月から単独で月刊化し、公称発行部数は10万部のヒット作となった。これは、やはり月刊の「東京ウォーカー」の発行部数を超えている。
一時、週刊で20万部の発行部数を誇っていた「東京ウォーカー」だが、昔の勢いはもはやない。出版業界も多くの内需産業と同様、国内客だけでは成長戦略を描けないのだ。出版物の発行部数、広告収入ともに減少傾向にある出版社にとっても、インバウンド関連は成長が見込める有望市場だ。
7月からは台湾で、日本に出発する観光客向けに、日本のお店で使えるクーポンを付けたSIMカードを発売。また、中国では四半期に1度、年収4000万円を超える富裕層に郵便で直送するフリーペーパーも発行している。
「爆買いは確かにブームですが、一過性かもしれない。そう危惧する百貨店など広告主も少なくない。日本のどのお店で、どんな素晴らしいものが買えるのか。こちらから情報を提供していく必要があると考えています」(矢野晋也・マガジンブランド局カスタム事業統括部メディアソリューション課ビジネス開発ユニットリーダー)