唐辛子を日常的に食べると、全死亡率とがん死や虚血性心疾患死リスクが減るようだ。中国の大規模疫学研究の報告から。

 研究グループは、中国の多様な10地域住民のデータを基に、香辛料入りの食品の摂取と全死亡率および疾患別の死亡率との関連を調査。登録時にがんなどの既往がなかった30~79歳の男女48万7375人を解析対象とした。

 登録時、参加者は前月に食べた香辛料入りの食品の量を「全く~ほとんど食べない」「数日のみ」「週1~2日」「週3~5日」「週6~7日」から一つ選び回答。食べた香辛料についても「生唐辛子」「ドライ唐辛子」「唐辛子ソース」「唐辛子油」、あるいは「その他、わからない」から複数選択してもらった。ちなみに、最も摂取頻度が高いのは生唐辛子の8割、次いでドライ唐辛子の6割だった。

 このほか、学歴や生活習慣、赤身肉や野菜・果物の摂取量、家族の既往など死亡リスクに関わる項目の有無にも回答している。

 2004~13年の追跡期間中、男性1万1820人、女性8404人が死亡した。

 全死亡率を香辛料入りの食品摂取別で単純に比較すると「週1日未満」集団で年1000人あたり6.1人、「週6~7日」集団では同5.8人と大きな影響は認められなかった。しかし、他のリスク因子の影響を補正して解析した結果では、男女ともに香辛料入りの食品摂取頻度が高いほど全死亡率が低下。「週6~7日」集団の死亡リスクは「週1日未満」集団より14%減少したのである。低減効果は「生唐辛子」で有意に高いことが示された。

 疾患別では、がん死、虚血性心疾患死、呼吸器疾患死リスクが「週1日未満」集団よりも「週6~7日」集団で有意に低かった。一方、脳卒中や糖尿病に起因する死亡では差が生じなかった。

 さて、唐辛子の辛味成分「カプサイシン」はサプリメントとして流通しているが、今回の調査で死亡リスク低減効果を認めたのは生唐辛子。最近は海外品種も出回っているので、秋口でも「生」が手に入る。せっかくだから、食べ過ぎない程度に丸ごとどうぞ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)