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出口治明の提言:日本の優先順位

軽減税率を議論する前に検討すべき事がある

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第141回】 2015年10月1日
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 わが国の消費税率は2017年4月に8%から10%に引き上げることが決まっているが、その際に生活必需品の税率を低く抑えるかどうか(軽減税率)が、大きな政治問題になっている。財務省は税率を一律に10%とした上で、マイナンバーカードを使って食料品などの増税分を後から給付する試案を公表したが、どうやら混乱に輪をかける結果となってしまったようだ。この問題は一体どのように考えればいいのか、そもそもの原点に立ち戻って検討の視点をチェックしてみたい。

政府とは何か、税とは何かを
理解することが全てのスタート

 人間社会では、ゴミの収集のように誰もがやりたがらないが、やらなければ健全な社会が維持できなくなる仕事がある。それを、「公共財や公共サービスの提供」と呼んでいる。そして人間は「公共財や公共サービスの提供」をやってもらうために政府をつくったのである。ところで、公共財や公共サービスの提供(=一般に「給付」と呼んでいる)を行うためには財源が必要となる。そこで人間は、「給付」に当てる財源として政府に徴税権を与えたのである。

 以上のことから、次の2つの公式(原則)が導かれる。

1.負担が即ち給付であること(給付を手厚くしようとすれば、負担を上げるしかない、あるいは負担と給付はバランスしなければならない)

2.負担(徴収)も給付(分配)もシンプルに設計しないと、管理コストがかさんでムダが多くなること(これが、市民が本能的に「大きな政府」を嫌う根本的な理由である。要は、100円寄付をしても、現地に届くのが10円や20円では困るということである)

 それでは、なぜ消費税率を上げる必要があるのか、という問題から検討してみよう。

 社会保険料は目的税の一種と考えていいので、租税負担率と社会保険料負担率を合計した国民負担率(対GDP比)をみると日本は39.8%(2011年)で、OECD諸国(トルコを除いた33ヵ国)の中では下から7番目である(もちろん平均よりかなり低い)。G7の中では、日本より低いのはアメリカだけである。つまり、日本は小負担(低負担)の国である。

 次に給付の代表格である社会保障支出をみると日本は23.7%(対GDP比、2011年)でOECD諸国(34ヵ国)の中では上から14番目となる。もちろん、平均より高く、日本より上位にいるのはG7ではフランス、イタリア、ドイツの3ヵ国しかない。つまり、日本は中福祉の国なのだ。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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