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森信茂樹の目覚めよ!納税者

欧州で機能している軽減税率を
なぜ日本では避けるべきなのか?

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第99回】 2015年9月21日
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世間の疑問に答えよう
欧州で軽減税率が機能している理由

欧州では、消費税込みの総額表示になっている

 財務省の提言した日本型軽減税率が大きな話題となっている。この案は、欧州で導入されている軽減税率が様々な問題を持つということで考え出された「苦肉の案」である。

 軽減税率については、様々な問題や課題があることを、これまで指摘してきたとおりだが、筆者のところにはその反論も寄せられている。これについて考えてみよう。

 最も多い反論は、「欧州では、軽減税率は定着しているではないか。なぜわが国ではできないのか」という質問である。

 これに対する筆者の答えは、「もちろんわが国でも導入できないことはない。しかし、欧州でも軽減税率の的確な執行には、インにボイスの導入をはじめとして、大きな手間とコストがかかっている。それがわかっていながら、あえて10%引上げ時にわが国で導入することは、政策論、財政論(コストパフォーマンス)として避けた方がいい(避けることは当然)」ということである。

 2014年4月、わが国で開催されたOECD主催のハイレベル税制当局者の集まり(VAT Global Forum)で、OECD事務局、IMFなどが、「欧州の軽減税率・非課税制度は、消費税制度の効率性を損なっており、なるべく縮小すべだ」という見解を述べ、参加者全員が賛同した。

 また、プレスリリースされた報告書には、以下の記述がある。

 「今回の消費税グローバルフォーラムにおいては、消費税が所得などの異なる層に与える影響についても議論が行われた。低所得者世帯の負担を緩和するため、軽減税率を導入している国もあるが、消費税グローバルフォーラムにおける議論においては、軽減税率は、低所得者を支援する方策として、対象者を限定した給付措置に比べると極めて非効率であるということが確認された」

(参照リンク)http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion1/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/04/24/26dis14kai4.pdf

 OECDサンタマン事務局長は、筆者に「(軽減税率問題は)Don’t Follow Europe」と忠告した。

 このように、「欧州で軽減税率がスムーズに定着している」という表現は、正確ではない。当局者は、軽減税率対象品目の拡大に強く反発しているのだが、どこの国も政治のポピュリズムにより、効率の悪い軽減税率・非課税を導入させられているというのが、実情だ。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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