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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

「還付方式」は消費税の欠陥を隠蔽する苦し紛れの奇策

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第29回】 2015年9月17日
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このままでは消費者のみならず事業者の側にもさまざまな問題が発生する

 消費税の軽減課税に関して、財務省が「還付方式」を提案した。

 この仕組みは、一見したところ、(実行コストの問題を抜きにすれば)日本の特殊事情に合わせた現実的な軽減税率方式のように見える。

 しかし、詳しく見ると、さまざまな問題がある。導入すれば、将来に大きな禍根を残すだろう。以下では、いかなる問題があるかを指摘しよう。

 なお、与党は、店頭での軽減課税についても並行して検討するとしている。また、対象品目をどうするかという問題もあるが、ここではこの問題は扱わず、還付方式の問題点のみについて論じることとする。

導入と維持に多大なコスト
その一方で効果は疑問

 この仕組みでは、消費者の購入情報を「個人番号カード」に搭載されているICチップに記録し、店頭レジの端末から「軽減ポイント蓄積センター」にオンラインで送って蓄積する。その情報を用いて還付を行なうのである。

 このため、読み取り端末を全国津々浦々の零細商店に至るまで設置しなければならず、構築にコストがかかる。徴税のための仕組みだから、費用は国費で賄わざるをえないだろう。

 通信回線も大規模店などでは問題ないが、零細商店では、オンライン接続のために新たな工事が必要だ。しかも、それを維持し、故障等に対処する必要がある。食品販売店には高齢者が経営する零細商店も多いが、高齢者がこのような情報機器を操作し維持するのは、かなりの負担だ。

 また、消費者も、個人番号カードを常時携帯し、還付申請手続きをしなければならない。

 しかも、限度額である年間4000円以上の還付はなされないので、その部分については、結果的には無駄な手続きをすることになる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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