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外科医のつぶやき

「時を読み、今を読め」は複雑系社会を生きる大切な方法

柴田 高
【第16回】

 「おい、タカシ、世の中は人しだい、人間が社会をつくるからな」とことあるたびに中学生だった私に言い聞かせていた父。

 「人間が集まって社会ができるって、当たり前だよ」と私。

 「いや違う。強い意思と行動力、徳を積めばたった一人でも社会をつくることができる」と力をこめる父。

 当時、父の「人間が社会をつくる」という言葉の本当の意味が理解できなかった。しかし、最近はよく理解できる。ビジネスで成功をおさめなくとも、コツコツと徳を積むだけでも人々が集まり、人間社会が形成されることを実感させられる。

 最近、大学卒業前の息子にその話をすることがあった。

 「なるほどね、でも、おじいちゃんが言ったことでしょ。オヤジは僕らにどんな言葉を残すの?」と家族団欒の中、息子が言う。

 「そうだな。“時と今を読め”ってことかな。オヤジは医学生のときに時間が読めることに気づいたんだ」と私。

 「わからない」と息子。

 「いつも時計を見るときに今は何時何分かを前もって心で宣言してから、時間を確認するんだ」と私。

 「そしたら何が」と息子。

 「次第に体で時間を感じるようになる。最初はデジタル表示の時計で時間を読むといいよ。勘がさえてくると寝ていて、ふと目覚めたときなど、今何時何分かがあたることだってあるんだ」と私。

 「頭で考えるイメージと五感で感じるすべてを使って、まず時間を感じ、試してみる。外科医になってからは患者さんのおなかの様子や手術の流れ、さらには手術後の検査結果を想像し読んでみる。読みが違うと、なぜ違ったかを納得するまで調べる。これを繰り返していると先を読む力が芽生えてくる」と自慢げに話す。

 「そうか。先読みしてチェックするんだね」と息子。

 T病院勤務医時代を思い出す。

 「癌性胸膜炎の胸水穿刺をお願いしたいのですが」と外科病棟から研修医のK先生の電話。

 「了解です。レントゲン写真出しておいてください」と私。

 外科病棟、詰所では胸部レントゲン写真が2枚読影用のシャーカステンにかけられている。

 「患者さんは何号室? まず診察に行きましょう」と詰所の前を通りながら患者さんの部屋へ行く私。

 「やー。こんにちは。Sさんどうされました」と私。

 「明け方から、体を起こさないと息苦しくて」とSさんは鼻孔に酸素チューブを装着して、辛そうに答えてくれる。

 「少し診させてくださいね」と背中に聴診器を当てる私。詰所へもどり「K先生、病歴とレントゲン読んでね」とお願いした。

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柴田 高

川崎医科大学卒業後、大阪大学論文博士課程修了。日本外科学会指導医。日本消化器外科学会専門医。現在は大幸薬品社長。著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』がある。


外科医のつぶやき

現在は製薬会社役員である外科医師による医療エッセイ。患者の知らない医師の世界。病院の内側が覗ける、ここだけの話が満載。

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