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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

厚生年金はあと16年 で破綻する!
偽りの経済想定を捨て、制度改革を急げ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第68回】 2010年4月28日
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 前回、厚生年金の財政について、つぎのように述べた。

 厚生労働省の2009年財政検証では「賃金が毎年2.5%上昇する」と想定されているが、これは現実の値に比べて高すぎる想定だ。仮に毎年0.5%の低下とすると、2020年度における保険料収入は、財政検証では36.9兆円とされているが、27.1兆円にしかならない。2030年度における保険料収入は、財政検証では44.5兆円だが、24.2兆円にしかならない。赤字を積立金の取り崩しで賄ってゆくとすれば、積立金は2030年度までのどこかの時点でゼロになる。つまり、厚生年金制度は今から20年間さえ継続することができず、それまでのどこかで破綻する。

 これは、物事の本質を捉えるために、細かい計算をせず、簡単な近似計算を行なった結果である。この推測が正しいことを、以下では、もう少し細かい計算で検証してみよう。

「被保険者が減るのに
標準報酬総額は増える」とされている

【図表1】は、2009年度財政検証の「基本ケース」を示したものである。

 保険料算定の基礎となる「標準報酬総額」は、I欄のように想定されている。これにA欄の「保険料率」を乗じたものが、B欄の「保険料収入」になる(2016年度まではごくわずかな食い違いが生じるが、無視しうる差だ)。

 標準報酬総額の年伸び率を計算すると、表のJ欄のようになる。2024年度までは、2%を超える伸びとなっている。その後伸び率は低下するが、それでもほぼ1%程度で伸びることとされている。

 他方で厚生年金の被保険者数を見ると、現在は3440万人であり、2012年の3480万人までは増加するが、その後は継続的に減少すると予測されている。被保険者数伸び率(表のL欄)は、2030年度まではマイナス1%に達しないが、2030年度以降は、マイナス1%を超える。

 このように被保険者総数は減少するにもかかわらず標準報酬総額が増加するのは、「賃金上昇率2.5%」という仮定が置かれているからだ。実際、被保険者伸び率に2.5%を加えると、ほぼ【図表1】のJ欄の数字になる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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