ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

厚生年金積立金が枯渇し、
年金財政が破綻するこれだけの理由

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第67回】 2010年4月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 厚生年金の将来の財政状況は、「財政検証」として推計されている。その最新版は、2009年の2月に発表されたものだ。厚生年金についての「基本ケース」の結果は、【図表1】に示すとおりである。

 これによれば、積立金は現在144.4兆円だが、今後増える。2049年には500兆円を超えて、なお増加する。2066年からは年間収支がマイナスになり積立金の取り崩しが始まるが、2105年になっても、まだ132兆円の残高がある。つまり、今後100年間は、積立金はなくならないわけだ。これを見ている限り、「年金財政が破綻する」などということはありえないように思われる。

 しかし、この数字は、一定の仮定に基づいて計算されたものである。「今後50年以上の期間にわたって積立金が増え続ける」という結果は、経済的な前提条件に強く依存しているのである。それが満たされなければ、結果は大きく変わる。

 とくに問題なのは、この連載の第65回で述べたように、賃金上昇率が2.5%、積立金の運用利回りが4.1%と想定されていることだ。これらは、明らかに過大な想定と考えられる。

「基本ケース」の経済想定は楽観的過ぎる

 ここでは、賃金の問題を取り上げよう。日本の賃金は、1990年代末までは増加し続けていた。日本の年金制度は、こうした経済情勢を基本にして設計されている。すなわち、経済が成長し、物価や賃金は上昇するものとして設計されてきたのである。したがって、問題とされたのは、名目値で決められている年金が、上昇する賃金にいかにキャッチアップできるかということであった。このために、インフレスライドの制度が導入されていたのである。

 問題は、この傾向が将来も続くと考えてよいかどうかである。

 実は、すでに10年以上前から、この前提は満たされなくなっている。すなわち、賃金の上昇率は停滞し、さらには絶対額が減少するようになった。たとえば「現金給与総額」(事業規模5人以上)の指数を見ると、1997年の108.5をピークとして、それ以降はほぼ一貫して低下している。2009年においては95.1であるから、この間に13%強下落したわけだ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
消費税だけでは財政再建できない!「日本を破滅から救うための経済学」

経済論争の最大のトピック=デフレ問題から、赤字国債発行の問題点、年金の破綻、消費税増税、円安誘導の為替政策まで、主要論点を網羅。いずれのテーマでも、通説と一線を画す内容に驚愕すること必至。綿密なデータの読み込みに裏付けられた、野口教授のマクロ経済政策論!1680円(税込)

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

突如として世界中を襲った経済危機。激流に翻弄される日本経済はどうなってしまうのか? なすべき対策はあるのか? 100年に1度の未曾有の事態を冷静に分析し、処方箋を提示する野口悠紀雄の緊急連載!

「野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む」

⇒バックナンバー一覧