続々と欧州にたどり着くシリア難民たち。9月末の米国での会見では、安倍晋三首相が外国人記者から難民を受け入れる可能性について聞かれる一幕もあった 
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 欧州が直面しているシリア難民問題は、第一義的には人道の観点から議論がなされるべきだろう。しかし、大勢の難民の受け入れが、先行きの欧州経済にどんな影響を及ぼすのか冷静な議論を行う必要もある。

 経済協力開発機構(OECD)の幹部2人がCNNマネーのウェブサイトに次のような寄稿をしていた。

「今回の難民危機は、受け入れ国の経済や社会を弱め、不安定にすると信じる人たちがいる。しかし、欧州はこの問題を乗り切るための手段と経験を有している」

「移住者に適切に対処すれば、経済にポジティブな貢献をもたらすことができる。その証拠はこれまで各国で広く観察されてきた」

 そのためには、難民ができるだけ早期に労働市場へ参加できるようにサポートすることが重要である。彼らが語学や就職に必要なスキルを習得できるように、最初にしっかりと援助する必要がある。それによる短期的な財政支出の拡大を嫌うと、移住者の失業状態が長期化して、かえって受け入れ国の財政負担は重くなってしまう。

 そういった失敗を回避できれば、いずれ「移住者の納税額が、社会保障受給額を上回るようになる」「最初に利益を被る経済が(今回最も難民を多数受け入れる)ドイツとなることは中期的には明白だ」とOECD幹部は主張する。

 しかし、ドイツはギリシャ救済議論でも見られたように、財政支出拡大に欧州一渋い国。「OECDが言うような対応を彼らは選択できるだろうか」との疑問が湧く。

 ドイツでは実際どういう議論になっているのか。フランクフルトにいる市場関係者に聞いてみると、意外な答えが返ってきた。「こういうときこそ、財政収支の黒字を活用すべきだ」と考えている人が財界では多いという。