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田中均の「世界を見る眼」

欧州の難民・移民問題は日本にも他人事ではない

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第48回】 2015年9月16日
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難民・移民問題が深刻な課題として浮上
EU各国で極右・極左勢力が台頭

 欧州が大きく揺れている。これまではギリシャなどに端を発する公的債務問題や、ウクライナ問題・ロシアとの関係が主要な課題であったが、ここに来てシリアなどからの大量の難民流入やEU内の移民問題が極めて深刻な課題として浮上してきた。

 特にギリシャ、ハンガリー、イタリアに大挙して流入するシリア難民は、海上でのボート転覆などで多数の死者が出るなど人道問題としても放置できない問題となっているが、一方においてこれらの難民は生活が豊かで難民受け入れにも寛容なドイツなど北部への国に大量移動し、これら諸国で大きな政治問題となっている。

 ドイツは難民流入を一時的に制限するため周辺国との国境の検問を導入すると発表している。欧州委員会は難民急増に対処するためEU諸国による16万人の分担受け入れ案を提案するに至っている。

 シリアからの難民問題だけではない。欧州内のより貧しい国からより豊かな国への人の移動も急増しており、受け入れ国での失業問題や社会保障経費の増大を生んでいる。

 これらの深刻な移民・難民問題に直面し、EU各国の政治風土は大きく変わりつつある。なぜ移民・難民に自分たちの職を奪われなければならないのか、治安が悪化しテロの温床となっているのではないか、といった強い不満が、極右や極左政党の台頭を生んでいるのである。

 欧州は第二次世界大戦後、平和主義・人道主義・高社会福祉政策を旨とする社民主義を基調としていたが、ここに来て左右両極のポピュリズム的傾向が強まっており、排外主義的主張も散見される。例えばEUの中核国の一つであるフランスでは、極右政党ともいわれる国民戦線が反EU、反移民を掲げ、地方選挙や欧州議会選挙で相当数の議席を確保し台頭しており、マリーヌ・ルペン党首は有力な大統領候補の一人とも称されるに至っている。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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