難民・移民問題が深刻な課題として浮上
EU各国で極右・極左勢力が台頭

欧州の難民・移民問題は日本にも他人事ではない

 欧州が大きく揺れている。これまではギリシャなどに端を発する公的債務問題や、ウクライナ問題・ロシアとの関係が主要な課題であったが、ここに来てシリアなどからの大量の難民流入やEU内の移民問題が極めて深刻な課題として浮上してきた。

 特にギリシャ、ハンガリー、イタリアに大挙して流入するシリア難民は、海上でのボート転覆などで多数の死者が出るなど人道問題としても放置できない問題となっているが、一方においてこれらの難民は生活が豊かで難民受け入れにも寛容なドイツなど北部への国に大量移動し、これら諸国で大きな政治問題となっている。

 ドイツは難民流入を一時的に制限するため周辺国との国境の検問を導入すると発表している。欧州委員会は難民急増に対処するためEU諸国による16万人の分担受け入れ案を提案するに至っている。

 シリアからの難民問題だけではない。欧州内のより貧しい国からより豊かな国への人の移動も急増しており、受け入れ国での失業問題や社会保障経費の増大を生んでいる。

 これらの深刻な移民・難民問題に直面し、EU各国の政治風土は大きく変わりつつある。なぜ移民・難民に自分たちの職を奪われなければならないのか、治安が悪化しテロの温床となっているのではないか、といった強い不満が、極右や極左政党の台頭を生んでいるのである。

 欧州は第二次世界大戦後、平和主義・人道主義・高社会福祉政策を旨とする社民主義を基調としていたが、ここに来て左右両極のポピュリズム的傾向が強まっており、排外主義的主張も散見される。例えばEUの中核国の一つであるフランスでは、極右政党ともいわれる国民戦線が反EU、反移民を掲げ、地方選挙や欧州議会選挙で相当数の議席を確保し台頭しており、マリーヌ・ルペン党首は有力な大統領候補の一人とも称されるに至っている。