食事中の炭水化物を制限する「糖質制限」は市民権を得たが、「体脂肪」を減らすには「脂質制限」が有効らしい。
世に糖質制限vs脂質制限の報告は数多いが、ほとんどが自己申告や外来での問診によるもので、厳密な「事実」に基づくデータとは言い難い。先日報告された米国立衛生研究所(NIH)の研究は、対象者を全員入院させて食事や運動量などを管理し、データを取った点がミソだ。
対象者は平均BMI(体格指数)が35.9の肥満者19人(男性10人、女性9人、平均年齢35.4歳)。全員がNIHの関連施設に2週間×2回入院し、毎日1時間のトレッドミル運動をこなし一定の身体活動量を維持した。
入院初日からの5日間は総エネルギー量2740キロカロリーのうち、50%を糖質で、脂質25%、たん白質15%のバランスの良い基本食。それに続いて、初回入院時に6日間の糖質制限+2回目の入院時に6日間の脂質制限の群と、その逆のパターンを行う群に無作為に割り付けられた。糖質制限は糖質を800キロカロリー分減らし(糖質30%、脂質50%、たん白質20%)、脂質制限も脂質を800キロカロリー分減らしている(糖質71%、脂質8%、たん白質21%)。両制限食の総エネルギー量は1928キロカロリーだった。
その結果、1日あたりの体脂肪減少量は糖質制限で35グラムだったのに対し、脂質制限では89グラムと有意に多かった。糖質制限では、インスリンの分泌量が低下し、脂質燃焼量が増加したにもかかわらず、である。研究者は「体脂肪の減少には、インスリン分泌が関与する必要はないのかもしれない」と推測している。また、総コレステロール値など脂質の検査値は脂質制限で改善していた。
さて、貴方がすでに2型糖尿病予備群であれば、インスリン分泌の負担軽減が期待できる糖質制限は一考に値するだろう。一方、心筋梗塞の既往や家族歴がある方は、脂質制限の改善効果が望ましい。
ただし研究者はこうも言っている。「実生活では“続ける”ことが重要であり、自分はどちらの食事療法なら続けられそうか、を考えて選択すべきだろう」と。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)